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土地規制法、「住民に萎縮」懸念

海上保安庁海上警備の拠点になる石垣港の周辺は注視区域に指定されている。青枠の区域内は内閣総理大臣の権限で土地等利用者の氏名、住所、本籍、国籍、生年月日、連絡先、性別などの調査ができる(内閣府公表資料より)

海上保安庁海上警備の拠点になる石垣港の周辺は注視区域に指定されている。青枠の区域内は内閣総理大臣の権限で土地等利用者の氏名、住所、本籍、国籍、生年月日、連絡先、性別などの調査ができる(内閣府公表資料より)

法律専門家、不透明さ指摘

 自衛隊基地など日本の安全保障上、重要な土地や施設周辺での民有地利用を調査・規制を可能とする重要土地等調査法(土地規制法)は8月15日、2回目の指定で八重山地域も区域に加えた。注視区域7カ所に特別注視区域3カ所。今後、どのような影響が出てくるのか。法律の専門家は法制度の不透明さを指摘、「日本国憲法を侵害し、土地の所有者や住民に萎縮効果が出てしまう」と懸念する。

 竹富町は、鳩間島のほぼ全域と波照間島の南側など町の外縁部分が注視区域に組み入れられた。八重山の注視区域のほとんどが「国境離島」の位置づけ。排他的経済水域(EEZ)、大陸棚、接続水域の範囲を測定する際の基となる「領海基線」が基準となっている。

 これにより注視区域では国の権限で土地利用者の氏名、住所、本籍、国籍、生年月日、連絡先、性別などの調査が可能となる。

 さらに石垣市は自衛隊駐屯地の周囲1㌔に面している開南集落、与那国島は久部良集落の全域と比川集落の一部がそれぞれ特別注視区域になった。

 面積200平方㍍以上の土地や建物(延べ床面積)の所有権を移転する際、当事者の氏名や名称、住所、利用目的、利用の現状などを届け出なければならない。

曖昧な要件

 日本弁護士連合会は2021年6月、会長声明で同法案への反対を発表した。同法に詳しい弁護士の福田護氏は「駐屯地や施設に対し機能阻害行為をした人が勧告や命令を受け、それに従わなければ刑罰が科せられる仕組み。政府が土地利用者や関係者まで調べて規制するという構造が大変危ない」と説明する。

 米軍・自衛隊の動向を監視し、施設前で平和運動をする住民たちの活動が「萎縮しかねない」と指摘。22年9月に閣議決定された同法の基本方針にある「機能阻害行為の例示」について「航空機の離着陸の妨げとなる工作物があげられているが、それに何が該当するか分からない。全ては政府の裁量によって決まるのでは」と疑問を呈す。

 日弁連も、これまでに自衛隊など重要施設の機能が阻害された事実がないことを政府が認めていることから「立法事実の存在」そのものに懐疑的だ。

自治侵害のおそれ

 福田氏は、日本国憲法で規定される個人の尊厳、思想・良心の自由、表現の自由、財産権が「侵害」される危険性を訴える。内閣府の重要土地担当者は取材に「思想や信条に係る情報を含め、土地や建物の利用状況に関連しない情報収集はしない」と否定した。

 さらに福田氏は、地方自治の保障を定める憲法92条を侵害する可能性にも言及。土地規制法第7条が、市町村は国から土地利用の情報提供を求められた場合に提供するものと規定しているからだ。「地方公共団体が疑義も言えないまま、義務として情報提供をすることになる」と危惧、「今後、国が市町村の意見をどこまで聞き入れるか、その事実をしっかり見ていく必要がある」と強調した。

  • タグ: 土地規制法
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