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透ける政治的思惑 台湾立法院長与那国島訪問

与那国島から台湾へ向けて出航する台湾立法院の游錫堃院長と日華議員懇談会の古屋圭司会長。古屋会長は翌日、蔡英文総統と面会した=4日午後、与那国町祖納

与那国島から台湾へ向けて出航する台湾立法院の游錫堃院長と日華議員懇談会の古屋圭司会長。古屋会長は翌日、蔡英文総統と面会した=4日午後、与那国町祖納

「利用される」と警戒感

 【与那国】台湾の游錫堃立法院長(国会議長)らが4日、台湾から与那国島を訪れた。「与那国町の観光産業の発展」を前面に出した訪問だったが、游院長と面会した自民党を中心とする超党派の議員連盟「日華議員懇談会」の古屋圭司会長は「中国に対するけん制の意味もある」と明言(5日付9面)。町内には「島がいいように利用されているだけでは」との疑念が広がっている。

期 待

 游院長らは、同日開かれた食事会で今回の訪問目的について①台湾―与那国間で定期船開通を目指す往来②観光産業の視察旅行③台湾立法院と日本の日華懇との国会外交の展開―の三つを挙げた。

 訪問団は游院長のほか立法委員3人、宜蘭県の県長(知事)、台湾当局の交通・観光・外交部の担当者、観光業者など総勢80人。うち30人近くが観光関係者だったという。

 このため、島内では観光産業の発展につながるのではとの期待も。町観光協会の大嵩長史会長は、游院長らの来島前日に台湾議長ら一行の来島を知った。現地にいた大嵩会長は「観光局の方と話ができ、非常に関心が高いと感じている。宿泊施設の面でも投資してくれることに期待している。高速船は与那国町がずっとやりたいと思っていることで、今回来られたことに意義があると思う」と話す。

疑 問

 一方で、游院長らの訪問目的に関して、事前に町の担当者である企画財政課へは知らされていなかった。また、町が目指す高速船の航路は姉妹都市を結ぶ台湾の花蓮市間だが、同市の関係者は同乗していなかった。

 ある関係者は「直前まで(前々花蓮市長の)魏木村氏が一緒に来る話もあったが流れたようだ」とし、「花蓮市との高速船就航を目指すのであれば、同市の関係者も乗せてくるべきでは」と首をかしげる。

 与那国町には、国境を超える際に必要なCIQ(税関、出入国管理、検疫所)がないが、游院長らの来島にあたり臨時のCIQを祖納港に設置した。

 担当した船舶代理店によると、国の関係機関から税関に6人、検疫に2人、出入国管理に8人、動物検疫に2人、植物検疫に1人の計19人のスタッフが祖納港に配置された。

 こういったことから実績を積むのに一定の成果があったとの見方もある。

目 的

 一方、町の観光振興が目的であれば町民挙げた歓迎ムードを演出するはずだが、町役場から游院長らの来島に関する町民への情報提供はなかった。そもそも、役場に公式の文書が届いておらず、町側は最後まで日本側の担当者が誰だか分からなかったという。

 これに、ある議員は「いくら何でも、役場に正式な連絡が来ていないのはおかしいのでは」と疑問視。玉城デニー知事が中国を訪れている中での動きに、反中国を掲げる日台間の政治的な思惑があるとみる。

 游院長が訪問目的の三つ目に掲げた「国会外交」。これが真の目的か。町の担当者も「今回は場所を提供しているだけ」と明かす。

 游院長らとの食事会には町議10人のうち革新系議員2人が出席を見合わせた。そのうちの1人で、町職員時代に在台湾花蓮連絡事務所代表として台湾との交流を推進した田里千代基氏は警戒感を強めている。

 「台湾との交流なら何でも手放しに大歓迎という時代は終わった。今後は良からぬうねりをつくらせないようにしなければ」。

 

  • タグ: 与那国台湾游錫堃立法院長
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