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地裁判決確定、市控訴せず ジュマール市有地無断使用

ジュ社へ損害賠償請求へ

 ㈲ジュ・マール楽園が石垣市の行政財産(森林)2013平方㍍をゴルフ場(旧ジュマールゴルフガーデン)として無断使用した問題で、「違法に債権の管理を怠った」として中山義隆市長に対し不法行為に基づく損害賠償金約269万円を同社に請求するよう命じた那覇地裁判決が9日、確定した。市が8日の期限までに控訴しなかった。市は判決に従った手続きを進める。(8面に関連)

 判決などによると、ジュ社の市有地越境は2018年12月に、防衛省が社有地を陸上自衛隊配備用地として買収に向けた境界確認作業で判明。市は越境の時期や経緯について確かな資料がないことを理由に「ジュマール楽園に過失があったと軽々しく判断することはできない。不法行為だったと言うことはできない」として普通財産貸付料に基づく10年分賃料約50万円を19年11月に損害金として請求、納付を受けた。

 判決は、市有地の無断使用がジュ社の過失と不法行為に当たるとして市の主張を退け、財産権の侵害があった場合に請求可能な20年分の損害賠償金の支払いを求めるよう市に命じた。損害賠償金の額は普通財産貸付料より高い行政財産の市使用料条例に基づく算定方式で約320万円と認定、ジュ社がすでに支払った約50万円は差し引いた。

 判決によると、不法行為に基づく損害賠償請求権は地方自治法に定める債権に当たることから放置したり免除したりすることは許されない。地方公共団体の長に請求権を行使するかしないかの裁量もない。判決は「請求権を行使しないことは違法に債権の管理を怠るものというべきである」と判事した。

 さらに、市は普通財産の使用料相当額を請求した理由として、行政財産の使用料を定める市使用料条例での算定に必要な時価を算出するための不動産鑑定に相当の費用を要すると主張していたが、市が無断使用地を含む周辺市有地で不動産鑑定を実施し、ジュ社に損害金を請求する約4カ月前に評価書の提出を受けていたことも訴訟で明らかになり、判決は「合理的であったとは言い難く、採用できない」として市の主張を退けた。

 裁判は、市民7人が適正な使用料に相当する損害賠償額を算定して請求するよう求める住民監査請求を20年7月9日に行い、同8月28日付で「請求に理由がない」として棄却されたことを受け、同9月26日に那覇地裁に提起。ことし4月21日に判決が出た。

市「継続しても利益少ない」と判断

 石垣市有地無断使用に対する損害賠償請求訴訟の地裁判決について市は9日、「裁判所との間に見解の相違はあるが、紛争を継続して異なる結果が出たとしても本市の利益は少ないものと判断し、上訴審などその他の手続きは行わないこととする。判決に従い手続きを進めていく」と中山義隆市長名のコメントを出した。

 今後の対応については「行政財産を含む公有財産の無断使用は本件に限らず、広く市民生活に影響を与える事案。広大な森林を含む市有地がある中、隣接する土地所有者が意図せず越境してしまうといった事例も想定できるので、個々の案件ごとに適切に判断していきたい」とした。

  • タグ: 市有地無断使用
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