八重山毎日新聞社

　由々しき事態である。国の個人情報保護委員会がデジタル庁の立ち入り検査に入る。マイナンバーに別人の公金受取口座を誤登録するミスが続出した問題。制度に対する国民の不安、不満は高まり自主返納も相次ぐが、岸田政権は顧みようともしない▼そもそも国は何をしたいのか。マイナ法の目的には「効率的な情報の管理、利用」とあり、「国民の負担軽減」は2番手。デジタル技術を社会に浸透させて国民の生活をより良いものへと変革させるＤＸ社会を目指すというが、よくわからない▼そもそもカード取得は任意。義務ではないが、「国策」で推進していること。当初は運転免許証と併用する案が出たがいつのまにか立ち消えに。2番手だった健康保険証併用が前面に出て、この4月には医療機関窓口にカードリーダー設置が義務付けられた。おかしくないか▼そもそも並行してポイント配布というアメを用意し1兆8千億円もの巨費をばらまいたのは妥当だったか、疑問符が付く▼住民票誤交付、健康保険証や年金記録、障がい者手帳のひも付けミスによる個人情報だだ漏れ。乳幼児や百寿者などのカード手続き、口座管理など、そもそもの制度設計自体にも疑問が相次ぐ▼「そもそも」を何回使えば疑問が解けるのか、はてしないなぞなぞのようである。（慶田盛伸）