八重山毎日新聞社

　「その時点」という言葉は便利である。後に変更する場合でも「その時点で予定はなかった」と言えるから▼陸上自衛隊石垣駐屯地着工前の2019年2月の住民説明会で自衛隊側は「石垣島で米軍と共同訓練の計画は全くない」と明言していたが、ことし3月の駐屯地開設から半年後には共同訓練が行われ、沖縄防衛局は「2019年2月時点において予定はなかった」と釈明した▼着工前の説明会ではほかに、駐屯地内での射撃訓練は外に音の出ない屋内専用施設「覆道射場」で行うと説明していたが、まだ完成していないからか、空包を使った射撃訓練を行いたいと隣接の開南公民館に伝えたという▼いずれも、その時点での約束をほごにするかのような対応。駐屯地ができてしまえば後は何でもあり、のように見える▼これに公民館側は異議を唱え、「たとえ空包であれ、日常的に射撃音が聞こえてくるというのはとても耐えられるものではない」と実施しないよう求めている。中山義隆市長に出した要請文には次の一文があった。隣接住民の苦悩が表れている▼「私たちは、地域の風景や生活環境など、これまで大切にしてきたものが大きく変わっていく中、駐屯地や自衛隊員と、どのように向き合って暮らせば良いのか模索を続けている」。（比嘉盛友）