八重山毎日新聞社

昔から小説が苦手であまり読んでこなかった。1ページ目から順に読んでいく感じがどうも性に合わない。なんで最初から読まないといけないんですか、パッと開いたページから読める本はないんですかと開き直っていた▼もちろん努力はした。でも1冊読むのに半年かかったり、早々に諦めて放り出したりした。途中から読める小説として「『草枕』はどうだ」との意見もあったが、やっぱりだめだった▼そんななか、小欄を担当することになって少し考えが変わった。ちゃんと読む必要が出てきて、ひまな時はペラペラめくっている▼新聞のコラムでは、小説や物語を引用する際のテンプレートがある。物語のあらすじ、社会の現状、物語の結論と社会への提言というのが一般的。全国紙のコラムもだいたいそうなっている▼別にそこを目指しているわけではないが、小説家の文体や書きぶりに共感したいと思うようになった。小説読みは「今さらか」と笑うかもしれない。何を読んでいるかは秘密する▼コラムだと一人称は「筆者」とするのが基本。キーボードで文章を打って「筆者」を名乗るのはユニークだが、しなやかさを取り入れたいので「私」にしている。でもこの調子だと、そのうち「僕」になるかもしれない。あすはノーベル文学賞の発表日。（玉津盛昭）