八重山毎日新聞社

　「新聞に心霊写真らしきが載ってるんですけど」。そんな電話が編集部に何本かあった。何日か前の新聞に掲載された写真に白っぽい人の顔が写りこんでいるというのだ▼元の写真を確認した。色白の人物が大勢の人の中に写っており、黒っぽい服装と相まって顔が浮いて見えることもなくはない▼科学では幽霊の存在は証明されていない。日本の法律でも、幽霊なるものは存在しないという立て付けになっている。心霊写真の存在は、われわれの暮らす社会では認められないということだろう▼一方で、面白がって心霊写真に見える画像をネット上に掲載するケースも散見される。人類は点が三つあればそこに人の顔を見いだしてしまうほどに想像力が豊かだ。この脳の認知機能には名前も付いており、シミュラクラ現象と呼ぶそうだ▼人間の顔のようなものを発見して「心霊写真」と楽しむ分には実害はないだろうが、実在する人物の場合だと、そうはいかない。ＳＮＳなどで侮辱やからかうようなコメントとともに拡散すれば、人格を蔑視したとして罪に問われかねない▼ネット上で人を傷つける行為が社会問題化したことから侮辱罪が厳罰化された。ある日、プロバイダーから情報開示請求に関する書類が届くという恐怖体験は、だれしもしたくないはずだ。（立松聖久）