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市役所旧庁舎の解体準備が静かに進んでいる…

 市役所旧庁舎の解体準備が静かに進んでいる。開口部や石綿の撤去を先行しており、来春にも躯体の解体撤去にとりかかる。この建物で30年余勤めた者として、深い感慨を覚える。ひとつの時代の終えん▼旧庁舎は復帰2年前の1970年竣工。登野城の現市立博物館敷地にあった木造赤瓦庁舎から埋め立てられた美崎町に移転してきた。沖縄でコザ騒動や戦後初の国政選挙、本土では大阪万博のあった年だ▼あれから半世紀。さまざまな歴史を刻む現場であり続けた。新空港問題で市長室に詰め寄る反対住民の激しい抗議活動。戦闘服に街宣車で尖閣問題を主張、抗議する集団。きんさん、ぎんさん来訪。脳裏に刻まれた「場所の記憶」である▼一方で駐車場はさまざまな集会や、とぅばらーま大会、八重山まつりなどの主会場。市民が最も多く集い、にぎわう、親しまれた場所だった。周囲の木々も枝ぶり豊かな巨樹に育った▼熱い論戦が繰り広げられた議会議場。議員諸氏がそれこそ口角泡を飛ばした委員会室。対応する職員も含めて、いずれも市の未来を思えばこそのことだったに違いない▼跡地に構想される大型商業施設は高さ13階。まちの景色は年々変わってゆく。周辺地域活性化への期待は反映されるか。場所の記憶と風格を残すため、できるだけ緑の保全を。(慶田盛伸)

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