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「そして、一輪の花のほかは」という絵本

 「そして、一輪の花のほかは」という絵本がある。ジェイムス・サーバー作。日本では1983年、高木誠一郎訳で篠崎書林から発刊されているが、残念ながら現在では入手困難▼その作品が先日、村上春樹さんの翻訳で「世界で最後の花 絵のついた寓話」としてポプラ社から発刊された。子ども向けでなく全世代向けである▼原作は1939年、ナチス・ドイツがポーランドに侵攻して始まった第2次世界大戦開戦時に描かれた。絵は簡易平明、分かりやすく、繰り返される戦争の惨禍の中の「平和への切実な願い」。作者は自身の娘にあて、子や孫たちが生きる世界に戦争がなく、より良い時代であってほしいことを切に願った▼翻訳者の村上さんはあとがきで「世界では今でも残酷な血なまぐさい戦争が続き、いっこうにおさまる気配はありません」と述べ、「世界で最後の花」を守るために、多くの人が力を合わせることを望んでいる。ぜひご一読を▼ウクライナで示されたように、私たちは戦争が起きてしまう世界に生きている。まして「台湾有事」をあおる風潮、世論の国に▼旧暦6月(るくんぐゎつ)を迎えた。島々で、村々で「来夏世(くなつゆ)」の豊穣と安寧を願う「世願(ゆうにが)い」がひときわにぎやかに行われる。平和あればこそ、である。(慶田盛伸)

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