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「正しい盗み方」というものがあるそうだ…

 「正しい盗み方」というものがあるそうだ。その畑全体の成長に悪い影響がないように、遠慮しながら、あちこちから少しずついただくという▼「正しい盗まれ方」もある。だれかが自分の畑のものをとっているとき、面と向かっては?らない。咳ばらいをしたり、歌を歌ったりして、盗んでいる人に気付かせるのである▼自身が書き溜めた島の言葉や風習、伝承がデータベースとして公開されている与那国島出身の和歌嵐香(わからんこ)・N子さんが画文集でこの流儀を取り上げている(5月25日付本紙3面参照)。本土出身の私にとって画文集は時に難解だが、「盗む」「盗まれる」の流儀は深く印象に残った▼応用編もある。N子さんと長年付き合っている山口県立大学名誉教授の安渓遊地氏はその著作のなかで次のようなエピソードに言及している▼畑でものをとっている人のことを畑の持ち主が「ちゃんととりなさい」と叱り、ものをとっている人は「ちゃんととっている」と反論したというのだ。コントのような掛け合いだ。口元が緩む▼ただし、この流儀は、どんなに貧しい人でも飢えて死なせることはあってはならないという教えなのだと知れば、見方も変わる。盗みを奨励してなどいない。伝えているのは島の「ディンブン」(知恵)なのだ。(松田良孝)

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