八重山毎日新聞社

　「よく毎週コラムを書けますね」と言われることがある。すらすら書いていると思われがちだが、５３２文字のコラムにいつも苦戦している。ある雑誌記者にぐちをこぼしたら「うちは毎週３万字」と笑われた▼コラムを書き続けるコツは一応ある。以前も紹介したが、気になった小さなできごとを毎日メモする。そのいくつかの内容が一つの話題としてつながるケースがあり、そこに時事ネタが結びつくとコラムが完成する▼この調子で２年以上、小欄の水曜日担当をしてきたが、いつまでも同じやり方だと限界を迎えるから、解決策はないか考えていた▼ある日、小説好きの記者と出会って居酒屋で意気投合した。実際に書いたコラムも読んでもらい、改善点やアドバイスをもらった。帰り道に「いま見える風景からおもしろい文章を考えて」と宿題を出された▼目の前には住宅街のバス停があり、４人の男女がバスを待っている。時間は夜９時で天気はくもり。たたんだビニール傘を持った黒い服の男性は腕組みをしている。制服の高校生カップルと、大きな紙袋を持った若い女性もいる▼小説家ならこれだけの素材で書けるそうだ。その風景の写真は撮ったので、たまに眺めている。今のところ良い文章は思いつかないが、何かのきっかけにはなりそう。（玉津盛昭）