リン酸塩がサンゴ衰退要因 北里大・琉球大
石西礁湖でのサンゴ衰退の原因の一つとして、海底の砂など堆積物に蓄積されたリン酸塩の影響があることが明らかになった。北里大学講師の安元剛氏と琉球大学助教の安元純氏らの研究結果によると、海底の堆積物から放出される「交換性リン酸塩(EPS)」のレベルとサンゴの健康状態や生息密度との間に強い関連性が確認された。EPSの流入は陸域からと考えられており、陸域対策の新たな影響評価法としてサンゴ保全への活用が期待される。「Marine Biotechnology誌」に5日付で掲載された。
研究チームは、石西礁湖の環境省が長年にわたってサンゴの被度や白化状態などの調査を行っている石西礁湖内の31エリアを中心に117地点から堆積物サンプルを採取し、EPSレベルを分析。その結果、EPSレベルが高い地点では、多くのサンゴ種の成体と幼生の密度が低く、白化現象が多く観察されることが判明した。特にハナヤサイサンゴやミドリイシ、アザミサンゴなどでEPSレベルとの間に明確な負の相関関係が示されたほか、成体より幼体で感受性が高いことも分かった。
高いEPSレベルが検出された地点は、竹富島南部のエビ養殖場から排水される地点と黒島周辺の畜産地域の近くに集中。産業活動から流出するリン酸塩を含む栄養塩が、サンゴ礁環境に蓄積されていると指摘する。
両氏の研究チームが1月に発表した研究では、リン酸塩がサンゴの骨格形成を阻害することも分かっており、今回の結果と併せて陸域からのリン酸塩の流入が長期にわたってサンゴの成育に悪影響を及ぼす可能性を示している。
安元剛氏は「海水は流れているのでこれまで評価する手法がなかった。EPSの測定方法を保全活動に取り入れることで、陸上からの汚染物質がサンゴ礁に与える影響を軽減するための効果的な対策を講じることができる。リン酸塩削減につながる陸域対策について地域住民や関係事業者、行政、研究者が連携して取り組んでいきたい」と述べた。
論文はhttps://doi.org/10.1007/s10126-025-10412-5から参照できる。
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