出現情報発信で注意喚起 石垣自然保護官事務所
国内で石垣島と西表島を中心に生息する国指定特別天然記念物・カンムリワシの保全に向け、過去・現在・未来を考える「カンムリワシシンポジウム2025」(環境省石垣自然保護官事務所主催)が9日夜、石垣市八島町の同事務所で開かれ、当日の気象状況などを勘案した「カンムリワシ出現注意報」を発信するアイデアが提唱された。
ラジオ、SNS活用
シンポジウムは県獣医師会野生動物保護対策委員会の宮城国太郎氏を進行役に、金城輝雄(琉球野生生物救護保全センター)、山本以智人(石垣自然保護官事務所)、土城勝彦(県獣医師会野生動物保護対策委員会)、上地永一(石垣市環境課)、水谷晃(Island Ecosystem Research)の5氏が意見を交わした。
水谷氏は、カンムリワシは長く飛ぶことができず、「森林に特化した鳥」と紹介した。採餌方法は「待ち伏せ型」。エネルギーを消費しないよう木や電柱でじっと待ち続け、田んぼ、道路のカエルなどを見つけると降りて捕まえる。西表島では、冬場にカエルやトカゲなど森の餌が少なくなり、山すその田んぼにおりてくる。水谷氏が所属する団体の調査で、西表島では速度超過のほか木がうっそうとしている道路での事故が多かった。
上地氏は、今年度から石垣市がバンナ岳に近い休耕地をビオトープとして再生させ、カンムリワシの餌場につなげる取り組みを説明。沼地では水生生物の生息を確認しており、今後、カンムリワシの餌となるカエル、ヘビ、カニの定着に期待した。
山本氏は、クジャクなどと餌や生息地の競合を問題視。外来種対策を課題に挙げた。
土城氏は島の限られた面積の中で「絶対的・相対的な餌不足」が生じている可能性を指摘、成鳥は無理をして餌を探して交通事故に遭い、幼鳥は採餌できず飢餓や衰弱する点を懸念した。
カンムリワシの交通事故を減らす取り組みとして、人間の手で交通事故のリスクを低減できることから当日の気象状況などをみてカンムリワシが道路に飛び出したり、行動が活発になったりすることを予測し、地元ラジオや行政の公式会員制交流サイト(SNS)で情報発信し、運転手に注意喚起する方法を提起した。
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