牛飼い17年 無念の廃業
小浜洋子さん(69)=宮良=は約17年間、続けてきた牛飼い人生に幕を下ろすことを決めた。理由は人手不足。従業員を雇って営農してきたが、辞めた従業員の補充が難しく廃業を決めた。「牛飼いは楽しい」と話すが、9月のセリに出す子牛2頭が最後となる。これまで25頭程度の母牛を飼養し、年間で20頭余りの子牛をセリに出してきたが、一人で続けるには限界があった。
将来を見据え、優良母牛をそろえていたことから新型コロナ以降、相場が下落する中でも50万円から60万円。いい時には80万円程度で買い手が付いた。「3町歩の採草地を持っているので採算はまだとれていた」と振り返る。
畜産業に飛び込む前は、サトウキビ農家として生活を立てていた小浜さん。ある日、隣から出た火災が畑に延焼。収穫を待つサトウキビが全滅したことをきっかけに子牛の生産農家に転身した。
52歳のころから白保の生産農家の下で5年間の修業を積んだ。その後、現在の場所で牛飼いとして独り立ち。現在の牛舎は、約10年前に鉄筋とコンクリートブロックで建築。5年前には、30頭の母牛を養えるまでに拡張。「本当はまだまだ続けたかった」と胸の内を明かす。
廃業の理由は人手不足。辞める従業員の代わりが見つからず、数年前に患った大病の影響もあり、一人での営農は不可能と判断。2月から3月にかけて母牛を全て処分。子牛は来月のセリで最後となる。
広い牛舎には、出荷予定の子牛が2頭。間もなくの廃業とは対照的に、すみずみまで掃除が行き届いた牛舎。畜産業もいつかは復活すると信じる小浜さんは牛舎や採草地の譲渡も検討。「畜産業を盛り上げるためにやる気のある人に引き継ぎたい」と話す。
ハローワークでも6月ごろから畜産業をやめて仕事を求める人が目立つようになったほか、畜産事業者が従業員を募集する求人も増えているという。
関係者によるとここ数カ月で廃業したり、廃業を視野に入れて飼養牛の数を減らしている農家もあるといい、飼料や肥料の高騰を背景とした厳しい営農状況に加えて業界離れによる働き手不足も、島の畜産業存続の危機に追い打ちをかける可能性が高まっている。
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