牧草不足で農家悲鳴 長雨・生育不良、肥料価格高騰
天候不順の影響が子牛生産農家を直撃している。年間を通して温暖な気候の八重山は、牧草の生産に向いているとされてきたが、昨年の長雨で牧草の刈り取り作業が行えなかったことや生育不足が原因で大幅減産。「牧草が全く足りない」状況だという。営農して約20年となる男性は「これまでで最悪の状況」と強調。「今は事業を継続することで精いっぱい。もうけは全くない状態で、今年の確定申告も初めての赤字となった」と肩を落とした。
牧草の自家採草が可能な八重山は飼料生産に対して有利な環境にあり、肉用牛など畜産経営のコストダウンにつながると期待されていたが、昨年の長雨や日照不足、寒波などが重なり、牧草の収穫量は島全体で4~5割減程度まで悪化しているという。
化学肥料は10年前に比べると倍近い値段となり、特にここ2年で急激に値上がり。男性は「肥料を安いものにしてみたが、牧草の育ち具合が全く期待したものではなかった。今は高価だが元の肥料に戻した」と説明。肥料や資材などのコストアップも農家を苦しめる。
就農3年目で餌はほかの農家からの購入に頼っているという男性は「始める時に牛舎建設などの資金を借り入れしている。返済もあり高価な輸入餌を使うことは考えられない。農道や借りた休耕地の雑草を刈り取って与えているが、一日中草刈りしても間に合わない。栄養価の面で、子牛には雑草を食べさせられない。この先どうなるのか」と不安を募らせた。
「牧草を運ぶのは人目に付きにくい夜間」だというのは、自家採草している農家の男性。「うちには売らないのに、なぜほかの人には売るのかと言われる」と事情を説明。「同じ生産農家として気持ちは痛いほど分かるが、限られた量しかないので仕方ない」とやりきれない気持ちを吐露する。
これまで屋外に積まれていた牧草ロールは、人目に付かない牛舎の中などで保管する農家が増えた。男性は「被害届は出ていないと思うが、盗難騒ぎもあったと聞いている」と餌不足を背景に生まれる農家たちの疑心暗鬼に心を痛める。
農家らからは「増頭が盛んに言われてきたが、いざこのような状態になると支援がほとんど受けられない。牛を減らすのは簡単だが増やすのは2~3年かかる。このままでは畜産業は衰退する」「畜産はやる気のある若手が増えている。家庭があり子どももいるのにこのままでは先行き不安でしかない」「夏場まではこの状態が続くと思う。短期でもいいのでなんとか支援してほしい」など悲痛な声が上がっている。
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