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米統治下の暮らし一冊に 「戦後沖縄生活史事典」発刊へ

戦後沖縄生活史事典1945―1972」のPR用チラシを手に発売開始を心待ちにする川平成雄さん(右)と妻の栄子さん=2日午前、新川の自宅

戦後沖縄生活史事典1945―1972」のPR用チラシを手に発売開始を心待ちにする川平成雄さん(右)と妻の栄子さん=2日午前、新川の自宅

元琉大教授・川平成雄さん 病に負けず編集

 日本経済史・沖縄社会経済史を専門とする元琉球大学教授の川平成雄さん(72)=石垣市新川、与那国町出身=が編者の最終責任者としてまとめた「戦後沖縄生活史事典1945―72」(編者・川平成雄、松田賀孝、新木順子)が8月10日、吉川弘文館から発売される。「余命は半年。長くて1年」。昨年5月のスキルス胃がん宣告後、病と闘いながら編集作業に力を尽くした。「発売までは…」。気力を振り絞って自宅ベッドで発刊を待つ。

15年の歳月

 川平さんは2007年8月、戦後沖縄の住民生活史をまとめようと、社会経済史・社会経済思想史を専門とする元琉球大学教授の故・松田賀孝さん(1934年生)、社会思想・女性問題を研究する琉球大学・沖縄国際大学・沖縄大学非常勤講師の新木順子さん(1947年生)とともに「戦後沖縄住民生活史研究会」を結成した。

 米軍統治期27年間で沖縄の人たちの生産・生活がどのようなもので、何が大切であったのかに研究の重点を置いた。以降、毎月2回の研究会で関係資料の収集と分析を徹底するなど生活史を読み解く作業を続けた。

 ところが、学生時代の恩師である松田さんが2017年11月に他界したことに伴い、研究会活動が中止に。この間の研究成果として生産・生活に深く関わった出来事111項目、102コラムが残されていた。

突然の病魔

 そのころから川平さんは「事典を完成させる責務がある」と痛感していたが、本格着手には至っていなかった。ところが、昨年4月に体調を崩し、同年5月に八重山病院に入院。検査の結果、スキルス胃がんと判明した。腫瘍の摘出は無理だった。バイパス手術は成功したものの、主治医からは冒頭の余命を告げられた。

 「私にはやるべきことがある。病気なんかに負けるもんか」。その後、入退院や通院を繰り返しながら執筆、写真を取り寄せての選定作業、キャプション付け、参考文献との照合など編集作業を本格化させた。ただ、病床にあっては体が動かない。妻の栄子さん(65)が手足となって市立図書館に通い、参考文献の確認などに当たった。栄子さんは「図書館の方には本当にお世話になった」と感謝する。

研究の重み胸に

 ただ、抗がん剤治療でがんの進行を遅らせることはできても、体力はどんどん落ちていく。ことし4月5~18日、5月3~12日、6月9~16日と立て続けに入退院を繰り返した。この間、初校、再校など編者としての作業を全て終えた。

 6月18日の両親の法事には子ども、孫、ひ孫、やしゃごが集まり、川平さん自身も元気をもらった。今、自宅で療養を続けながら穏やかな日々を送っている。

 同事典の3分の2以上は川平さん執筆のもの。自身の研究成果の集大成となるものだ。沖縄復帰記念日の5月15日に発刊・発売を予定していたが、出版社の都合で8月にずれ込んだ。

 川平さんは「この事典は沖縄返還50年の記念碑的存在として必ず注目されるだろう」と自信をのぞかせ、「あとは両手に研究成果(事典)の重みを感じながら静かに旅立ちの日を待ちたい」と声を振り絞った。

(比嘉盛友)

   ◇   ◇

 同事典は、米軍統治下の戦後沖縄で、激動の波に翻弄されながらもたくましく生きた人々の生産・生活を知る内容。大戦末期の米軍本島上陸から27年後の沖縄返還まで、生産・生活に深く関わった出来事111項目を政治・経済・社会・事件・娯楽・食・伝統工芸品など多彩なテーマで紹介。随所に102のコラムをちりばめている。同事典は500㌻で菊判・上製・箱入り。税込み8800円。

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