過去最悪のペース、カンムリワシ交通事故多発
- 2022年03月10日
- 地域・教育
希少な野生生物を保全するための種の保存法で国内希少野生動植物種に指定されているカンムリワシの交通事故が例年を大幅に上回るペースで発生していることから環境省、県、市は9日、「カンムリワシ交通事故 非常事態宣言」を発出した。石垣島では今年に入り6件の交通事故が発生するなど治療や収容体制がひっ迫する事態が続いており、同省石垣自然保護官事務所では「制限速度を守り、野生生物の飛び出しに配慮した運転を」と呼び掛けている。
同省では過去にイリオモテヤマネコやヤンバルクイナに対して非常事態宣言を発出したことがあるが、カンムリワシでは初めてとなった。
石垣島のカンムリワシ交通事故の統計は2008年から実施。10年には年間12件と過去最多を記録したが、ここ10年間は5件から9件の間で推移していた。
今年は1月5日に桴海で発生したのを始め、各地で交通事故が相次ぎ、3月5日には1日に3羽が収容されるという異常事態となり、これまでに6羽が救護され、うち4羽が死んだ。
カンムリワシの治療を行うたまよせ動物病院やリハビリなどを行うやいま村のケージには救護された個体が常に収容されている状態が続いており、医療体勢は綱渡り状態となっている。
同事務所の山本以智人上席自然保護官は「3月末にかけてさらに交通事故が多発することが予想される」とし、同事務所では関係機関と連携の上▽非常事態宣言のチラシ配布▽事故多発地点マップの公表▽過去の記録から交通事故が多発している地点への注意喚起看板の設置―などを実施する。
カンムリワシ 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)で国内希少野生動植物種のほか、国指定特別天然記念物や環境省レッドリストで現存種の中でもっとも絶滅の恐れが高い絶滅危惧ⅠA類に指定。国内では石垣島と西表島でのみ繁殖が確認されている。森林地帯や農耕地、水田、マングローブ林などさまざまな場所に生息し、カエルやヘビ、カメ、ネズミ、カニ、昆虫などを餌にする。1年に1度繁殖期を迎えるが一つしか産卵せず、成鳥になるまでに3年以上かかり、一度数が減ってしまうと回復するのに時間がかかる。石垣島では交通事故や生息地の開発行為で数の減少が心配されている。
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