名蔵湾の価値共有
- 2021年12月06日
- 地域・教育
「石垣島の海底遺跡と名蔵湾の不思議」と題する講演会(九州大学フロンティア研究センター主催、石垣市教育委員会共催)が5日午後、市民会館中ホールであった。屋良部沖で見つかった水中文化遺産と、名蔵湾で発見された世界的にも珍しい海底地形や大規模サンゴ群集に関する最新の研究結果が発表された。
県立埋蔵文化財センターの片桐千亜紀氏の報告によると、屋良部沖では琉球王国時代に中国との交易船が海難事故に遭ったことが文献で記録されており、同センターが2004年から行っている分布調査で屋良部沖を含む名蔵湾2カ所、石西礁湖4カ所で海難事故遺跡がみつかっている。
特に屋良部沖では壷屋焼の密集つぼ、四爪鉄錨13本がみつかり、船くぎも確認されている。同沖は安定した海域として当時から避難港として利用されており、フロンティア研究センター長の菅浩伸氏の海底地形調査で隠れ干瀬に囲まれていることが判明している。
これらの遺跡はサンゴに覆われており、片桐氏は「自然と文化が一体となった景観」と紹介。「この海域は琉球王国時代の遺跡と文献が組み合わさった石垣島では最も大切な水中文化遺産だ」と強調した。
この水中文化遺産の保全・活用の観点から、同大大学院比較社会文化研究院の中西裕見子氏(大阪府教育庁)は事前学習や観察ルールを盛り込んだダイビングを提案。リーフレットを作成しており、近く公開すると明らかにした。
名蔵湾の地形については菅氏が沈水カルスト地形(氷河期に雨水や地下水などによって溶かされて形成した地形)が湾中央部にあることを明らかにしている。くぼ地が数多くあり、河川の跡もある。この地図を使って調査した結果、大規模なサンゴ群集が存在すると報告した。湾内の独特の地形から湾中央には赤土も達していない。
菅氏は「名蔵湾では波浪から遮蔽された環境のもと、枝状サンゴや葉状サンゴが空隙の多い構造をつくり、これが細粒堆積物の懸濁をさまたげ、豊かなサンゴ群集を成立させている」と説明、海域利用計画の必要性を訴えた。
これに関連して国立研究開発法人水産研究教育機構水産技術研究所の名波敦氏がスジアラやナミハタなどを調査した結果から稚魚の成育海域になっていると紹介、「カルストとサンゴのコラボで魚の子どもたちが育っている」と話した。
ほかに県立芸術大学全学教育センターの藤田喜久氏による「石垣島の『湾』環境 砂泥に暮らす生き物たち」の発表もあった。
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