「パヤオナビ」成果評価 魚礁位置、潮流情報 GPSで把握

第19回MCPCaward2021で審査委員長特別賞とモバイル中小企業賞を受けた八重山漁協パヤオ研究会の金城吉英さん(中)と金城広国さん(右)ら=11月25日、東京プリンスホテル(提供)

携帯端末に表示される「パヤオナビ」。パヤオの位置が1時間単位で確認できる
八重山漁協が東京都内のベンチャー企業と共同で行っている「パヤオナビ」の取り組みが、先進的なモバイルシステムの活用で業務の効率化などの成果を上げた事例を顕彰するMCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)の第19回award2021で審査委員長特別賞とモバイル中小企業賞に選ばれた。
パヤオナビは、Upside合同会社=東京都千代田区=が「浮魚礁漁法における漁場選択支援サービスの開発」で東京都立産業技術研究センターから研究費の助成を受け、八漁協パヤオ研究会(70人)の金城吉英さん(53)、金城国広さん(42)らとの共同研究で開発したもの。
浮き魚礁の位置や潮流の情報を陸上で把握することで燃料費の低減と適正な漁場選択による収益向上を実現するのが目的。従来の勘と経験を可視化し、IT機器に慣れ親しんでいる若年漁業者への事業承継を円滑にするメリットもある。
パヤオには太陽光発電を備えた衛星利用測位システム(GPS)機能付き通信機器を設置しており、漁業者は端末で位置情報などを把握できる。さらに航行軌跡のほか漁場ごとの魚種、漁獲高などのデータを入力して蓄積しており、資源管理にもつながる。
同研究会はパヤオ6基を設置している。1000~2000㍍の海底にアンカーで固定されているが、潮流などによって2㌔余りの範囲で動くことから、うねりや悪天候時には探しにくく、時間と燃料費を浪費することが多かったという。
パヤオが動く範囲から超えた場合にはアラームが鳴る仕組みになっており、先月19日午後11時にパヤオとアンカーをつなぐロープが切れるトラブルが発生したが、翌日には位置情報のおかげでパヤオを回収することができた。
パヤオナビは研究会の20人を中核メンバーに約70人が利用している。金城吉英さんは「しけのときにはパヤオが斜めになって探しづらかったが、緯度経度をGPSに打ち込めば直線でパヤオに行ける。効率が良くなった」と効果を実感。金城国広さんは「まだ完成形ではない。利用者からいろんなアイデアが出ているのでもっと確実性のあるものにしたい」と今後の活用に意欲的だ。
2人は都内で11月25日行われた表彰式に出席、「操業情報の蓄積は漁師の漁法改善とともに水産資源のデータ蓄積を実現する。これらは漁師の収益向上・若手離職率の低減・水産資源の科学的管理計画といった社会貢献に寄与する」との評価を受けた。
研究費を活用した共同研究は20年度までの2年間で終了したため、研究会が継続に向けて関係機関と調整を進めている。
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