屋良部岳から調達 首里城正殿再建
2019年10月に火災で焼け落ちた首里城正殿の再建に向けて首里城復元事業実施主体の内閣府沖縄総合事務局と管理者の県による住民説明会が8日夜、崎枝公民館(石垣喜幸館長)で地域住民や田畑所有者らを対象に行われた。復元には屋良部岳に自生するオキナワウラジロガシを正殿の屋根を支える小屋丸太梁に利用する予定となっているが、住民からは「住民の同意なしに強行することはやめてほしい」などの要望が相次いだ。
県によると正殿の小屋丸太梁に使用するオキナワウラジロガシは6本で、国頭村の3本と石垣市の5本の計8本から選別して使われる。石垣市での調達場所はこれまで公表されていなかったが、同公民館によると今年3月に石垣市から屋良部岳のオキナワウラジロガシを切り出すと伝えられて判明した。本数や切り出す場所など詳細な情報がなかったため、県に対し住民説明会を開くよう要望していた。
首里城正殿の梁材に使う木は直径47㌢、長さ7㍍の材が取れる必要があり、まっすぐで洞や腐朽がないものが求められている。
国や県は今年12月から来年2月にかけての伐採を予定しており、これまでに行った現地調査では19本の候補木が国立公園の第3種特別地域内の屋良部岳で確認された。
環境省や市などと調整の上、環境対策や後継木となるオキナワウラジロガシの苗木の植栽などの計画をまとめ、昨年9月には候補木に針を刺して音波で樹木が建材に適した状態か調べる検査も実施しているが、今年3月以降、地域の反発を受けて9月27、28日に他の地域で候補木を調査。前勢岳周辺の万勢山林道や県営バンナ公園、名蔵ダム、平得大俣の県営林、野底林道など複数箇所で実施したが、候補木は見つからなかった。
質疑では「集成材やほかの樹種、ほかの建材は使えないのか」といった質問が多く挙がったが、担当者は「古文書にある通りのものをなるべく使うよう進めている」と説明した。
計画では後継木としてオキナワウラジロガシを植林することになっているが、県の説明で地元に苗木がないことも分かった。住民からは「琉球王府には人頭税で宮古・八重山の人が苦しめられた。われわれが説明会を要望しなければだまって伐採したのではないか」「情報公開請求したが、黒塗りの状態。伐採する木を公開して市民の意見を問うべきだ」「イノシシのエサとなっているドングリがなくなったら農地を荒らす可能性がある」「島内で5本しか見つからなかった貴重な木を切るべきではない」などの意見が上がった。
同公民館では今月中に臨時総会を開き、今後の対応を協議する。
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