老朽化で閉館の危機 公的機関に協力訴え
【黒島】1970年代からウミガメなどの調査・研究をしているNPO法人日本ウミガメ協議会付属「黒島研究所(若月元樹所長)」が、建物の老朽化で閉館の危機に直面している。施設は1973年の建築から47年が経過し、早期建て替えが急務だが、運営母体の同協議会が非営利団体のため建て替え資金の蓄えがない。研究所によると、10年ほど前から竹富町や公益財団に支援を求めているが色よい返事はなく、若月所長は「このままでは、数年で運営から撤退せざるを得ない」と窮状を訴えている。
施設は鉄筋コンクリート造り1階建て、延べ床面積570平方㍍。展示室には黒島周辺の海域に生息する魚類、甲殻類、ウミガメなど100種類以上を飼育・展示し、来館者に紹介している。サンゴなどの標本展示室や資料保管室、研究室も設けている。
活動としては78年からウミガメ類のさまざまな研究を行っている。黒島や西表島でウミガメ類の産卵数を調査し推移を記録。黒島西の浜での産卵調査は県内のウミガメ調査の中では最も歴史があり、約40年も継続している実績がある。石西礁湖やサンゴ礁の調査も実施」し、日本で3本の指に入るほど貴重なサンゴの標本を収蔵しているという。
ほかにも大学のインターンシップ、学芸員実習の受け入れ、地元小中学校や石垣市内小学生の環境学習の場として教育・普及活動に取り組み、地域に根差した活動を続けてきた。
ただ、施設の老朽化で雨漏りや外壁の傷みが年々激しさを増す。建物と土地は沖縄本島の民間企業が所有し、同協議会が賃借している。協議会は、建て替え事業費が数億円単位になると試算。額が大きいだけに所有者の出資やクラウドファンディングによる資金調達は厳しいと判断し、公的機関などに協力を求めている。
若月所長は「老朽化で施設が使えなくなるとNPOとして島から撤退することになる。長期的な調査も途絶え、標本なども散逸する恐れもある。八重山の標本や資料は八重山に残すべきだ」と強調する。
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