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昭和期の名脚本家で直木賞作家、エッセイスト

 昭和期の名脚本家で直木賞作家、エッセイストの向田邦子。「あ・うん」「阿修羅のごとく」など、没後40年近い今なお読み続けられる作家である。NHKTVドラマの哀愁を帯びたトルコ軍楽の旋律とともに記憶している方も多いはず▼その向田さんの「眠る盃」(講談社)に、「字のない葉書」という小品がある。75年前の敗戦の年、下の妹の疎開にまつわる実話だ▼厳格で頑固、明治生まれの父が、疎開する末娘に自分あての宛名を書いた、たくさんのはがきを持たせた。まだ字が書けないために父は「元気な時は大きな〇を書きなさい」と言い添えた。最初は大きな〇だったはがきが、すぐに小さな〇になり、やがて×になった▼3カ月後、疎開先から末娘が戻った時、父は表に飛び出し、やせ細った娘を抱きしめて声をあげて泣いた。「私は父が、大人の男が声を立てて泣くのを初めて見た」▼いつか本欄にとりあげたいと思っていた。下調べして驚いた。「字のないはがき」(小学館 角田光代文 西加奈子絵)として絵本化され、今年3月「第1回親子で読んでほしい絵本大賞」を受賞していた。平成18年からは中学校の国語教科書に採用されている▼声高に反戦を叫ぶより伝わる時代や戦争への怒り、悲しみ。この夏、ぜひ親子で読んでいただきたい1冊である。(慶田盛伸)

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