IUCNきょう来沖 6日から現地調査
- 2019年10月05日
- 自然・科学
沖縄県内で約55㍍の最大落差を誇るピナイサーラの滝。自然体験ツアーの人気スポットだ=2019年6月29日

米軍北部訓練場返還跡地の着陸帯付近で2日に発見した空包を数える宮城秋乃さん(左)と名護署の警察官=3日、国頭村安田

アマミノクロウサギなどの輪禍防止へ利用規制が始まった林道=徳之島
「奄美大島、徳之島、沖縄島及び西表島」(鹿児島県、沖縄県)の世界自然遺産登録の審査に向け、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際自然保護連合(IUCN)の専門家2人が5日来沖する。6〜8日に沖縄島北部、8〜10日に徳之島・奄美大島、11〜12日に西表島をそれぞれ調査、推薦区域の再編といった前回の指摘事項への対応や保全体制などを改めて確認する。IUCNは視察結果を踏まえ、世界自然遺産にふさわしいか評価する報告書を来年5月ごろ、世界遺産委員会に提出。来夏の同委員会で登録の可否が決まる。(八重山毎日新聞・沖縄タイムス・南海日日新聞3紙合同企画)
■観光管理計画策定へ【西表】
西表島では、包括的な観光管理計画の策定に向け、ガイド事業者の管理と自然体験フィールドの利用人数に上限を設けるため、具体的なルールづくりの取り組みが進んでいる。
町は9月、基準を満たした事業者のみに免許を交付し、自然観光事業を認める竹富町観光案内人条例を制定。来年4月の施行を目指している。
環境省は、フィールドの利用実態を把握するため、主要な場所に自動カウンターを設置、統計を開始した。観光客から入域料を徴収して自然環境保全に充てる計画だ。
IUCNが指摘した課題をクリアしようと行政が取り組みを進めているが、地域との温度差はまだある。観光案内人条例の対象事業者の定義が曖昧な上、条例の策定プロセスに不満を持つ住民も。世界遺産登録が与える住民生活への影響を懸念する声も今なお残る。
■環境調査と対策を【沖縄】
IUCNが指摘した問題点の一つが推薦区域の分断だ。政府は本島北部の米軍北部訓練場返還地をやんばる国立公園に組み入れ、「飛び地」状態を解消した。しかし、返還地から相次いで米軍のものとみられる廃棄物が見つかり、環境団体は水や土壌汚染の可能性もあるとして登録前の環境調査の徹底を求めている。
政府は前回、約3万8千㌶、24カ所に分断された区域を推薦地として、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に提出。これに対しIUCNは昨年5月、生態系の連続性に問題があるなどとして登録延期を勧告した。
再推薦に向け政府は昨年6月末、約3700㌶の北部訓練場返還地を国立公園に編入。推薦区域は全体で5カ所にまとめられた。
しかし、2016年12月の返還後、支障(廃棄物など)除去を異例の1年の早さで終えた訓練場跡地では、空包やドラム缶などの廃棄物がたびたび見つかっている。一部の土壌からは国際的に有害性が指摘され使用が禁じられているDDT類、BHC類などの殺虫剤も検出された。
環境団体は、登録前に環境調査を徹底することなどを求める要望書をIUCNに提出した。日本自然保護協会の安部真理子主任は「返還地に入る度に市民が廃棄物を見つけるのは異常。返還地を受け取った以上、国は責任を持って対応してほしい。環境調査と対策が推薦地の価値の保全のためには必須だ」としている。
■ネコ対策進む【奄美】
国の特別天然記念物アマミノクロウサギなどを襲って生態系を脅かす野生化した猫(ノネコ)の対策が進んだ。環境省と地元関係機関は2018年3月、ノネコ管理計画を策定。同年7月、山中での捕獲を開始した。
今年7月まで1年間の捕獲数は78匹。当初計画(月間30匹)の約2割にとどまる。作業エリアの拡大やわなの増設など取り組みを強化したが、伸び悩んでいる。奄美群島国立公園管理事務所は「作業の効率化を図りたい」としている。
インターネット上の高額取引などを背景に、希少動植物の違法な盗掘・盗採も深刻だ。関係機関は警察とも連携してパトロールの強化を進めている。今後は山中に自動撮影カメラを設置して監視体制を強める方針だ。
観光客の増加を視野に、両島のモデル地区で利用規制の取り組みが始まった。認定ガイドの同行や車両台数制限などを定めた関係機関の自主ルールが導入された。奄美大島ではナイトツアーの過剰利用と野生生物の輪禍が懸念されており、さらなる対策が急がれる。
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