直ちに工事を中止せよ
- 2019年03月09日
- 社説
防衛省は、陸上自衛隊の平得大俣の陸上自衛隊駐屯地整備のための造成工事を直ちに中止するべきだ。
国防をかさに、豊かな自然環境を破壊してはならない。カンムリワシ舞う地を重機で踏みにじってはならない。
「法治主義」を率先垂範すべき国が、環境アセス逃れを行うことは断じて許しがたい。即刻中止を求める。
■アセス逃れは明白
5日着工のスケジュールはあらかじめ決まっていたに違いない。周辺4公民館住民が求めた「面談」が行われたのが先月27日。その前日、岩屋防衛相が国会内で記者会見し「3月着工」を明言していた。
面談から一夜明けて、赤土流出防止対策のための資材を搬入した。翌1日には県赤土等流出防止条例に基づき事業開始を県に通知し、準備作業を始めた。これは周辺4地区住民に対して誠意ある態度と言えるか。
そして5日。赤土等流出防止対策が整ったとして現場で掘削作業を始めた。年度内着工によって県環境影響評価(アセスメント)条例を適用されないことが確定した。
豊かな自然環境や周辺集落の生活環境に大きな影響があることは間違いなく、周辺住民や専門家から懸念が指摘されている。その懸念に背を向け、問答無用で既成事実化を急いでいるとしか見えない。
県も市もカンムリワシなど希少種の営巣期に配慮するよう求めていたが、工事は強行された。アセス逃れの姿勢は明白である。これでは地元の信頼は得られない。
■環境調査一度も実施せず
着手したのは、予定地全体約46㌶のうち、民有地の大半を占める旧ゴルフ場(約13㌶)の一部約0・5㌶。国が取得したのは旧ゴルフ場だけで、市有地は議会議決を要することから、未取得のまま。
その旧ゴルフ場は、都市計画法に基づく開発許可を得ぬまま開発されたことが明らかになっている。つまり、この土地はただの一度も自然環境現況調査がなされぬまま造成された。
市有地も同様だ。法や県条例に基づく調査が一度も実施されずに開発がなされていいはずがない。それを知りながら用地取得し着工することも罪深い行為と言うべきだ。
県や市の求めに対し、防衛局は「希少種など発見された場合は、移動・移植を行うなど適切に環境に配慮する」としている。
重機が連日、ごう音を立てて動き回れば、カンムリワシなど希少種はすでに逃げ出したはずだ。
石垣島の生態系の頂点に立つカンムリワシが舞う地を、豊かな自然環境そのものを台無しにしてはならない。
■自然軽視姿勢が明白
そもそも自然環境保全より優先されるべき軍事的脅威が、石垣島に迫っているのだろうか。アセスに必要な3年間の時間を猶予できないほどの情勢とは思えない。
今月26日には「南西シフト」を構成する奄美と宮古島に陸上自衛隊警備部隊および地対艦ミサイル部隊が発足する予定だ。それでもなお、石垣島で工事を強行する意味はあるか。
1万4000筆以上の署名を集めた住民投票の実施もいまだ決まっていない。国は着工の既成事実化によって住民投票の「無力化」を狙っている。
岩屋防衛相は4日、国会質疑で「県民投票の結果にかかわらず辺野古埋め立て工事推進を決めていた」ことを明かした。
民意無視はおろか、辺野古の軟弱地盤、平得大俣の自然環境を含め、政権として自然軽視、軍事優先の姿勢が明白である。
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