便利社会に見直し機運
- 2019年03月06日
- 社説
全国で実に2万店余を展開するコンビニ最大手のセブンーイレブンがいよいよこの7月、沖縄に進出する。残念ながら石垣島への出店はいまのところないようだが、そのセブンが24時間営業をめぐって揺れている。
■「限界」に叫び
大阪府東大阪市にある加盟店、東大阪南上小阪(みなみかみこさか)店が「人手不足で24時間は限界」と先月、営業時間の短縮を始めたところ本部側から違約金約1700万円とフランチャイズ・チェーン(FC)契約の解除を求められたという。
「この8カ月間で3日しか休みが取れていない。個々の事情に応じ、営業時間を選択できるようにしてほしい」と店長は窮状を訴えている。
店長が言う個々の事情とは何か。グーグルマップのストリートビューで現況をチェックしてみると、同店が位置するのは保育園やヘアサロンなどがある、ごく閑静な住宅街。にぎやかな商店街ではなく典型的な郊外型店舗だ。深夜は人通りもまばらだろうと想像できる。それでも本部側は24時間営業にこだわり「契約は契約だ」とばかりに違約金という、いわば制裁をちらつかせてきた。
■需要を先取り
コンビニエンスストアのコンビニエンスとは文字通り「便利」という意味だ。24時間いつでも開いているというのは消費者にとっては究極の便利なのかも知れない。日本で最初に24時間営業を始めたのは1975年、やはりセブンの福島県郡山市虎丸店だそうだ。
大量消費時代の需要を先取りした形だったのだろうが、時は移りいまや少子高齢化を背景にした労働力不足時代である。折から外国人労働者受け入れ問題、歩調を合わせるように働き方改革が叫ばれている。都市型の過剰な便利社会に見直しが求められている。
こうしたなかで飛び出した今回の店長の悲痛な叫びと行動は大きな波紋を広げている。同業者からは励ましの電話が殺到しているという。本部と加盟店との上下関係からこれまで声を上げようにも上げられない状況を想像させる。一躍「時の人」となった店長。テレビ局の取材にこう話している。「深夜営業をなくして確かに売り上げは落ちたが、その分人件費も減った。結果的に取り分(利益)は増えている」
■許せぬ理不尽
コンビニの深夜営業は人通りの少ない地域などでは防犯効果があるとも言われる。暗い夜道に浮かび上がる店の明かりは救いであるはずだが、一方で従業員にとっては日々犯罪と直面していることにもなる。
一連の動きを受けセブンーイレブン・ジャパンは1日、24時間営業の見直しに向けた実験を始めると発表している。全国の直営店から10店舗を選び今月中旬から順次、営業時間を午前7時から午後11時までに短縮する。元来セブンーイレブンというブランド名は午前7時から午後11時という意味である。
実験結果とその生かし方が気になるところだが、迅速な対応と言えよう。次元は違うが、辺野古新基地をめぐる県と政府の対立に構図的な類似を見る思いがする。県民投票で圧倒的な民意が示されても聞く耳を持たない政府の理不尽さが許せない。
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