カンムリワシ数羽確認 陸自着工予定現場
- 2019年03月01日
- 社会・経済
営巣期を直撃か
「フィーフィー」。国指定特別天然記念物のカンムリワシの甲高い鳴き声が響き渡る。2月28日、陸自石垣島駐屯地建設に向け重機や資材が搬入された旧ジュマールゴルフガーデン入り口。「いた、いた。あそこ」。現場背後にある於茂登岳南の連山、真栄里山でカンムリワシが優雅に舞う。午前中だけで延べ4羽確認され、現場内の電柱にまで降りてくる若鳥も。風が草木を揺らし、小鳥がさえずる。そんな自然の大合唱を、ダンプカーの爆音が時折、かき消した。
現場は午前8時すぎに雨に見舞われたが、その後晴れ間がのぞいた。「カンムリワシが出てきそうだな」。日ごろからカンムリワシを見ている嶺井善さん(53)=於茂登=の予言通り、しばらくすると、現場の前にある山頂付近に現れた。同じ個体かどうか判別できなかったが、その後も違う場所で2羽確認された。
突然、現場内の電柱の上に1羽が舞い降りてきた。じっと周囲をうかがっている。車両の列をみて駆けつけた、近くで農業を営む男性が「僕の家で何をしているんだろうと見ているのかな」という。1羽はしばらくして飛び立ち、現場上空を旋回しながら遠ざかって行った。
カンムリワシは環境省レッドリスト2019で、ヤンバルクイナなどとともに絶滅危惧IA類に分類されている鳥類。
11月から春先にかけて営巣期を迎えるため、市文化財課は「営巣中に近隣地での騒音、震動などがあると巣を放棄することがある」として近隣での開発工事を避ける必要があると指摘しているが、防衛局は「これまで営巣が確認されていないことから、工事の予定に変更はない」として着工に向けた準備をこの日から本格化させた。
2月27日の4地区住民との面談で防衛局は、冬の現況調査を2月20日から3日間実施、工事エリアで営巣は確認されなかったと説明。春の調査は3月に行うとした。
嶺井善さんは「工事をする場所に営巣するわけがない。確認できないのは当たり前だ。巣は見えないところに作るもの。春の調査はこれからなのになぜ工事を進めるのか」と憤る。
日本野鳥の会石垣島支部の小林孝事務局長は「この時期は、繁殖の相手を探している時期。相手が定まれば、そこで新たな生命が誕生する。当然、そこに巣が作られる、あるいは今はその巣作りの時期であって、巣が見つからなかったのは観察不足であるか、あるいはこれから営巣作業に入るのか、といったところだろう。環境アセスメントをする前に着工して人間の都合で彼らの〝生きる権利〟を奪ってしまっている現実に恐れを覚える」と話した。
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