民主主義成熟の一歩に
- 2019年02月27日
- 社説
県内外のみならず国内外にも注目を集めた県民投票は18歳以上の有権者の7割が「反対」を投じて明確な意思表示を発信した。辺野古の新基地建設のための埋め立ての賛否のみに絞った投票で初めて民意が示された。
■石垣市44%台
焦点になった投票率は、52・48%で「反対」が知事選の際の玉城デニー候補の驚異的な得票数をさらに上回る43万4149票となり「賛成」の11万4908票を圧倒した。
気になるのが石垣市の状況だ。当日の有資格者数が3万8398人、うち投票した人が1万7138人、棄権が2万1260人で投票率は44・63%だった。11市のうち宮古島市の38・48%に次いで下から2番目で50%に達しなかったのは沖縄市を加え3市しかない。
投票率は投票で争点になっている問題への有権者の関心度を示すものとして注目される。選挙報道などでもマスコミが注目するゆえんである。その投票率で宮古島市とともに石垣市の関心度の低さが数字で示された形になっているということだ。
本島と海を隔てているという地理的状況から無理のないことかも知れない。日常生活に直接響く問題ではないからというのも分かる。それにしても投票に行かなかった人のほうが多かったというのは驚きだ。
■議論尽くせず
翻って考えると、今回の県民投票が平得大俣への陸上自衛隊配備問題を問う住民投票と同時実施であったなら、こんな投票率ではなかっただろう。今月初めの市議会における住民投票条例案否決は返す返すも残念でならない。
蒸し返すようだが、議論を尽くさず採決を急いだ市議会野党の責任は重いと言わざるを得ない。与党の中にも賛成へ動き始めた議員もいたからである。それに公明党が退席せず賛成に回れば条例案は成立していた。
平和の党と言われる公明党は基地問題に関して中央の党本部と県本部の主張に違いがあり、去る県知事選でも県本部の内部から公然と玉城デニー候補を支援する運動を展開する勢力が注目された。今回の陸自配備問題でもじっくりと議論を交わし説得する努力が必要だったのではないか。
ともあれ住民投票はこれで完全に終わったわけではない。議員発議を目指して、再度運動を構築し直して機運を盛り上げてほしい。市議会議員のみなさんも党利党略、主義主張を超えて直接請求という住民意思の重さに思いを致してほしい。
■現実直視して
県民投票開票後、関係者のコメントで印象的だったのはハンガーストライキを敢行するなど体を張って運動の先頭に立ってきた「『辺野古』県民投票の会」元山仁士郎代表の言葉だ。「沖縄の民主主義が大きく発展する一歩になったのではないか」と述べている。この言葉を借りれば今回の結果は日本の民主主義を成熟させる一歩ではないか。政府は「少数意見の尊重」という民主主義の大原則をいま一度かみしめるべきだし、沖縄だけに負担が集中し過ぎている現実の不条理に目覚めるべきだ。埋め立て工事が進むなか、あきらめ感が広がっているとの政府の見方を覆して圧倒的な民意が示されたのだから。
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