八重山博物館保存施設の早期実施を
- 2019年02月16日
- 社説
■人間国宝の作品そろう
先月23日、石垣市出身で元角川書店専務、産経新聞顧問の桃原用昇氏が、染色工芸家で重要無形文化財「型絵染」の保持者で人間国宝芹沢銈介の「いろは文六曲屏風」(萌黄いろは)を石垣市教育委員会に寄贈した。
桃原氏は過去に石垣市に国債1億円を寄贈し、それをもとに桃原用昇奨学基金が設置された。また、図書館や各学校にも図書を寄贈している。
今回、沖縄の陶芸家の故・国吉清尚氏の作品18点、沖縄紅型復興に尽力した沖縄県無形文化財保持者、故城間榮喜氏の紅型作品4点が氏によって寄贈された。
これで、石垣市立八重山博物館には人間国宝の鎌倉芳太郎、玉那覇有公、芹沢銈介という日本を代表する「型絵染」作家の作品や所蔵品がそろったことになる。
桃原氏は、芹沢作品について他の博物館からの依頼もあったが、郷里の博物館の学芸員の熱意に打たれ、寄贈を決定したという。そして「日本最南端の博物館に人間国宝の作品を常設してほしい」と述べている。
桃原氏の故郷に対する熱い思いが伝わってくるが、桃原氏の思いに博物館は応えることができるだろうか。残念ながら人間国宝の作品を常設するには厳しいのが現状だ。
■新博物館構想は?
博物館は1972年10月に開館した。今年47年目になる。建物の老朽化が進み、新博物館の構想・計画は2度も浮上したが、市役所移転をはじめ校舎建築予算の関係から早期実現は難しく、計画倒れに終わりそうな気がする。
しかし、そうであれば、きちんとした収蔵する倉庫の建設を考えるべきではないか。
現在、貸倉庫に収蔵されている収集品の保管状態はどうだろうか。ほこりをかぶり、他の業者の置物などもあるため混在する恐れがあるなど、危険極まりない状態だ。
また、解体して首里から運ばれてきた日本民藝館寄贈の西表首里大屋子の建物も長年、倉庫に眠ったままだ。
収集品が増え、常設展以外の展示会を開催するにもスペースが狭く一苦労するという。教育長はじめ、教育委員は倉庫を視察したことがあるだろうか。あるならば、現状の改善策を考えるべきであろう。なければ、ぜひとも視察すべきだ。このままでは、やる気のある館長や学芸員、職員の情熱を削ぐことになる。また、寄贈意欲も失われるはずだ。
父の命日には、父の本に会いに行く、という話を本で読んだことがある。同じような話を聞いた。寄贈した父の遺品を見たいと言われた博物館協議会委員、その委員は倉庫のほこりやエスロンパイプなどを思い出し、黙ったという。
市立八重山博物館協議会(大田静男会長)は昨年、倉庫などを視察し、教育長宛ての新博物館の早期建設を決議している。
■文系市議はいないのか
3月の定例議会は来年度予算が確定する議会だ。
文科系の市立図書館、市民会館、博物館、市史編集室、文化財課など、結果や成果の見えにくい文化に対する評価は低くなっていないか。予算の行方が注目される。
文化は精神的なものであり、人間形成にとって欠かせない重要なものだ。石垣市は将来の人材育成のためにも文科系の予算を増額すべきではないか。
議員も、箱ものに目を奪われず、文科系各課を視察すれば現状が理解できるだろう。文科系に目を向け、支援する市議の出現に期待したい。
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