御嶽の南根腐病に警鐘 李氏「このままでは砂漠のように」
郡内の御嶽の森で浸食が指摘されている南根腐病の深刻さを訴えようと、東アジアの森に関する文化の保存継承に取り組む「東アジア伝統の森文化保存会」の李春子代表による講演会「八重山の御嶽~敬森・敬水の『祈り』と『祭り』の祭祀空間」が22日午後、石垣市健康福祉センター視聴覚室で開かれ、約100人が参加した。
郡内の御嶽60カ所を取り上げ、御嶽に自生する貴重な植物や、各御嶽が記されている地域の古地図などを紹介する3月に刊行予定の李代表の新刊「八重山の御嶽|自然と文化」の出版に先駆けて開かれた。
李代表は、豊かな森を聖域としてたたえる御嶽には信仰や祭礼、伝統芸能が受け継がれている「文化的側面」と、貴重な植物が維持管理されている「生態的側面」があり、地域にとって誇りの風景になっている、と指摘。島の山や水、海などの地域の自然環境と密接な関わりがあり、信仰によって守られていることについて「森自体が生きている経典だと思う。人間社会と自然環境が共生するための敬森・敬水の祭祀空間」との見解を示した。
近年の課題としては、都市化や公園化など過度な開発や空間整備がある一方で、維持管理が面倒だと放置されてしまうケースも紹介。
直面する南根腐病について「刻一刻と浸食が進んでおり、このままでは砂漠の上に草が生えるだけのような状態になってしまいかねない。御嶽の伝統文化を未来につなぐためにどうするか、地域で考えてほしい」と事態の深刻さを訴えた。
石垣字会の大浜慶功会長も登壇し、宮鳥御嶽のイビ(聖域)で南根腐病が指摘されている樹木について「台湾や国内の専門家、樹木医などと連携を取りながら処置の方法などを検討したい」との考えを示した。
講演後は、石垣博孝市文化財審議会委員長、前津栄信市文化協会顧問、花城正美小浜公民館長ら地元有識者が登壇、会場の参加者との全体討論も行われた。
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