絶滅危ぐのヤシガニ
- 2011年07月09日
- 土曜リポート
資源管理と保全急務
捕獲の手緩めるのも必要
乱獲などで年々、個体数が減少しているヤシガニがいま、繁殖シーズンを迎えている。ヤシガニの生態研究をしている独立行政法人・水産総合研究センター西海区水産研究所亜熱帯研究センターによると、これまでの調査結果から雌は大きな雄と好んで交尾することが判明。同センターでは、ヤシガニを持続的に利用し、資源として守っていくために(1)繁殖期は捕らない(2)中くらいの雄を利用することを呼びかけている。(南風原英和記者)
ヤシガニはヤドカリ科の仲間で、インド洋から西太平洋の熱帯・亜熱帯地域に生息する世界最大の陸生甲殻類の一種。沖縄では食用のほか、はく製など装飾品に利用されるなど、古くから人々の暮らしと深く関わっている。
近年は、珍味として観光客による消費が増え、ペットとして高値で取り引きされるなど、乱獲によって生息数の減少が懸念されている。このため、環境省でもレッドデータブックで絶滅危ぐII類に指定しているヤシガニは、稚ガニ以降は陸上で生活することから、陸生生物とみなされ、県漁業調整規則で捕獲制限や規制ができず、野放しになっているのが現状だ。
このような実態を受け、西海区水産研究所亜熱帯研究センターでは、2005年から竹富町鳩間島でヤシガニの生態調査に着手。その調査結果に基づき、09年から石垣市や那覇市、宮古島市などで相次いで講演会を開催。住民にヤシガニの持続的な利用とその資源を次世代に残す方策などを提案してきた。
啓蒙活動に呼応し、多良間村では昨年4月、県内初のヤシガニ保護条例が制定され、宮古島市でも条例制定に動き出すなど、行政側に資源保護への意識が高まりつつある。
西海区水産研究所亜熱帯研究センターの佐藤琢(たく)研究員(水産科学博士)は「ヤシガニは捕獲・販売している人や観光客、地元住民みんなの共有物という考え方に立って、次世代につないでいくことが必要」と話す。
一方、鳩間での生態調査から、ヤシガニの成長が非常に遅いことも判明。雄が500グラムになるまでに推定で15年、雌が500グラムに成長するまでに30年かかるなど、資源回復に長い年月を要することから、「ヤシガニと共存するためには捕獲の手を緩めることも必要」という。
佐藤研究員によると、八重山では「こぶしより小さいヤシガニは獲らない」という暗黙の了解が捕獲業者間にできているほか、雌や未成熟な雄を捕っていないことも分かったという。
そのような状況から佐藤研究員は「自家消費は問題ないが、商取引にはライセンス制度が必要。また、資源管理と保護は県レベルで取り組むのが望ましい」と話す。
沖縄の食文化と観光資源としてのヤシガニにうまく付き合っていくために、適正な買い取りや適切な規制を設けるなどのルール作りが改めて問われている。
捕獲の手緩めるのも必要
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