文化の力で八重山を元気に
- 2011年02月23日
- 社説
地域再生大賞がスタート
■鳩間島音楽祭実行委に優秀賞
1998年以来、毎年5月3日に開催されている「鳩間島音楽祭実行委員会」の活動に対して、第1回地域再生大賞優秀賞の表彰が決まった。
この賞は、全国の地方新聞社46社と共同通信社が地域活性化に取り組む団体の活動を支援することを目的に、本年から実施するもので、沖縄からは「琉球在来豚アグー保存会」にも特別賞が贈呈されるという。
全国各地から推薦を受けた候補団体の活動内容は、実に多彩だ。わが国の経済社会が活力に欠け、沈滞していると言われて久しい今日、地域も疲弊しているとの嘆息が各方面から聞かれる。しかし地域再生大賞の50におよぶ候補団体の活動内容は、環境、医療、音楽、料理、郷土芸能などバラエティーに富んで生き生きとしており、決して地域が沈んでいる訳ではない、ということを改めて認識させてくれる。
あらゆる分野で、少しでも地域を元気づけようと真剣かつ活発に取り組んでいる多くの人々の姿がうかがえて、勇気がわいてくる。
第1回の大賞に輝いたのは、静岡県三島市で清流を取り戻す活動を行っている「グラウンドワーク三島」。準大賞は、兵庫県伊丹市で医師不足による地域医療の危機に取り組んだ「県立柏原病院の小児科を守る会」および岡山県倉敷市で古い町家の修復・再生に取り組んでいる「倉敷町家トラスト」の2団体である。
そのほかにもユニークな地域おこしが目を引き、これらの活動内容には、私たち八重山の島々を元気にするヒントが数多くある。
■ユニークな地域おこし活動
ところで、優秀賞に輝いた鳩間島音楽祭は、地域の人々が過疎化に歯止めがかからない深刻な島の状況を何とか活気づけようと、住民主導で取り組んでいるバイタリティーあふれるイベントとして知られている。
同音楽祭では、八重山民謡に限らず若いアーティストによる新しい歌や踊りを織り込み、地域住民と観光客らが一体となって明るく楽しくシマの活性化に取り組む姿が多くの感動を呼ぶ。
鳩間島は、人口50名足らずの小さな島であり、離島苦のハンディを背負って過疎化に悩みつつも、持ち前の明るさで数々の苦境を乗り切ってきた。
「鳩間節」や「千鳥節」など八重山民謡を代表する節歌をはじめ、ユンタ、ジラマ(ジラバ)などの優れた古謡が脈々と受け継がれ、多くの優れた歌い手や舞踊家、研究者が輩出し、八重山芸能の宝庫としても知られている。
同会の活動に対しては、(財)地域活性化センターが平成21年度に、「地域固有の風土・伝統・暮らしを守るとともに、地域に対する愛着と誇りをはぐくみ、地域の活性化を目指して活動している団体を支援する」目的で実施している第12回「ふるさとイベント大賞」奨励賞も受賞している。
■地域の個性を生かそう
数多くの離島からなる八重山地域においては、交通通信の不便さ、産業振興の困難性などのハンディをものともせず、輝く太陽、美しい海域、暖かい気候など地域特性を前面に押し出し、生き生きと個性豊かな活動に取り組む人々によって、地域再生の芽が数多くはぐくまれつつある。
長い時間をかけて伝承されたきた八重山古典民謡やユンタ・ジラバ・アヨウなどの古謡などの音楽文化、ピィパーズ、サフナー、サラムシルなどシマの素材を生かした独自の料理文化など、地域性に富む八重山独自の文化と、海の外からもたらされる新しい素材や情報を生かす知恵と工夫が、わが八重山地域には豊富に存在している。
今回表彰される鳩間島音楽祭は、私たちに文化の力で地域再生へ取り組む意欲を与えてくれているのである。
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