平和な島を脅威に巻き込むな
- 2010年12月08日
- 社説
きょうは太平洋戦争開戦の日
■離島防衛にシフト
尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件、北朝鮮の韓国砲撃で宮古、八重山への自衛隊配備論がさらに加速している。政府は南西諸島にシフトした島しょ防衛力を強化する新たな防衛計画大綱を年内にも閣議決定することにしており宮古、石垣、与那国への陸自配備がいよいよ5~8年後をめどに進められる可能性が強まってきた。
きょう12月8日は皆さんご承知の太平洋戦争開戦の日だ。1941年のこの日、日本がイギリス領マレー半島に侵攻するとともにハワイの真珠湾を攻撃し、一気に戦争に突入した。
以来3年9ヵ月に及ぶ戦闘の末、アジア・太平洋地域で2000万人以上、日本で300万人以上、沖縄で20万人以上が戦争の犠牲となり、1945年9月2日、日本が降伏文書に署名し戦争は終結した。この間に広島と長崎に原爆が投下され、沖縄は米軍が上陸し日本で唯一の地上戦が展開された。そして八重山も多くの犠牲者を出した。
太平洋戦争開戦の日を迎えて、わたしたちはこの平和な小さな島々を再び脅威に巻き込みかねない自衛隊配備問題をあらためて考えてみたい。
■中国は本当に脅威か
自衛隊の先島配備計画は、軍備を増強して東シナ海で海洋権益や尖閣などの領有権を主張して活動を活発化する中国脅威論が大きな理由だ。
しかしこれに疑問を向ける識者もいる。本当の理由は、防衛省の「組織防衛」にあると。冷戦終結以降自衛隊は年々人員削減が進んでおり、そこで組織の先行きに危機感を持つ防衛省が、東シナ海で活動を活発化する中国脅威論をことさらに強調して沖縄での自衛隊増強を図っているというのだ。だとするとはなはだ迷惑な話だ。
同問題では南西諸島にシフトする自衛隊の戦略が先日のNHKテレビの番組で取り上げられていた。長崎の自衛隊による離島での訓練の様子や、防衛省の担当者が石垣市や与那国を訪れ、町長に会ったり、市長も参加している会合に出席して盛んに受け入れを根回ししている様子が取り上げられていた。一方で自衛隊は来てほしくないという市民の声もあった。
さらに番組は、沖縄は米軍だけでなく日本軍にも住民が虐殺された悲惨な歴史があるだけに、自衛隊にも強いアレルギーがあることも紹介していた。
■自衛隊配備が逆に脅威に
確かに沖縄はこうした悲惨な歴史から「軍隊は要らない」を願っている特別な地域のはずだ。ところが現実は逆に日米の広大な基地を押し付けられ、今度は離島にまで基地を広げるというのだから、何をもって基地負担の軽減というのだろうか。
先島への自衛隊配備に関しては仲井真知事も、沖縄の歴史を考えると厳しいとの認識を示し、中山石垣市長も自らは誘致に動かないとの姿勢にある。さらに現空港跡地での自衛隊の利用も「ありえない」との姿勢だ。ぜひその姿勢を堅持してほしい。
同問題で本紙は、以前にも「国は余計なことをしないで」と訴えた。しかし計画は民主政権化でさらに具体化して加速しており、「国は離島を紛争に巻き込みかねない地域住民対立の火種を送り込まないで」と再度訴えたい。
日米安保体制化で本当に中国が日本の離島に侵攻する可能性はあるのか。その点疑問は多い。むしろ国境地域に自衛隊を配備することが、逆に緊張感を生み出し、紛争を誘発しかねない。平和な島の環境が脅かされる危険や対立の火種は送り込まないでほしい。
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