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発音に見る人類の進化

国名表記で「ヴ」音を変更

 政府が外国の国名を表記する際に使っているカタカナの「ウ」に濁音をつける「ヴ」の表記を変更する法案が成立したというニュースが先月末に流れた。 こんなことまで法律で決めるのかとあきれたが、 問題は深い。

 ■仮説唱え一石 

 科学ジャーナリストで毎日新聞専門編集委員の青野由利さんが米サイエンス誌に載った論文を紹介しながら面白い論考を書いている(毎日新聞3月23日付3面)。

話し言葉に使われている音は言語によってさまざまで、 その基本は人類誕生のときから変わっていないと考えられていた。 そこに一石を投じた人がいた。 1985年に仮説を発表した米国の言語学者チャールズ・ホケットだ。 狩猟採集民族は硬い食べ物をかむため上下の歯がきっちり合わさり、FやVの音を出しにくかった。V音やF音が生まれたのは農耕が進んで軟らかいものを食べるようになり、 かみ合わせが変わったからという説だ。

最近、 スイスやドイツなどの専門家からなる国際チームが古人類学や進化生物学などを駆使してこの仮説を検証した結果、 軟らかい食事が増えた新石器時代以降、上の歯が下の歯より少し前に出るかみ合わせに変わり、 その方がV音やF音が出しやすいことが分かったというのだ。

 ■合理性に疑問

 いま地球上で生きている狩猟民族もV音やF音の使用率が低く、 インドや欧州では製粉技術などの登場に伴い数千年でV音やF音が急増したとみられることも検証チームは示した。 古代ローマや古代インドではこれらの子音は「裕福さ」の象徴だったかもしれないという。

参議院での審議で河野太郎外務大臣は「本来なら『V』の発音だが、 無理に『ウ』に濁点を付けるよりバ行の発音に合わせるのが適当だ」と説明。 「国民に定着した表記、分かりやすさ、発音のしやすさを優先すべき」と語っている。合理的といえば合理的だろうが、 前述した通り「ヴ」にはこうした深い人類の歴史の裏打ちがあって存在していたことを考えると何でも合理的でいいのだろうかと考え込んでしまう。

ただ、ここで勘違いしてはいけないのは今回の変更はあくまで政府が外国の国名を表記するときのことで、 一般社会で人々が使っている言葉の発音まで規制するものではない。

 ■中舌音は文化

 実は新聞でも表記のしかたが細かく決められており、 校正係が神経を使ってチェックしている。 例えばベートーベンはその通りベートーベンだが、 新聞以外でいま最も普及している表記はおそらくベートーヴェンだ。 なぜか。 ベートーベン(Beethoven)のベーはB音であり、 ベンはV音だからである。 つまり、 本来の発音に最も近い表記なのである。 

この種の問題は何も外国に限った話ではない。 八重山の方言で独特な発音として「中舌音」がある。 「鷲ぬ鳥節」を歌うときの「トゥル」の「ル」は「ル」と「リ」の間の発音をしなければならない。 後世に残していかなければならない大事な文化である。 

中舌音の生まれた背景。 どなたか知りませんか?

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