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勝負の向こうに人生が

大坂なおみが世界女王に

 スポーツ観戦の醍醐味(だいごみ)は勝敗の行方よりもその分かれ目はどこにあったのか。そこで両者の精神と肉体に何が起きていたのか。それを知ることにある。それはとりもなおさず人生に置き換えられるからである。

 ■歴史塗り替え

 テニスの全豪オープン女子シングルス決勝で日本人初の優勝、世界ランク1位を決めた大坂なおみ選手が話題を集めている。日本テニス界の歴史を塗り替えたのだから社会現象といっても過言ではないだろう。

 世界四大大会の一つに数えられる全豪オープンは男子が5セット、女子が3セットマッチで争われる。大坂は第1セットをタイブレークの末、7|6で制し、続く第2セットもサービスゲームを迎えた時点で5|3とリード。世界トップレベルでなくても互いに力が拮抗(きっこう)している選手同士の対戦では一般的にサービスゲームが有利とされる。それだけにこの時点で大坂は断然優位だった。しかも40|0とラブゲーム濃厚だったのである。

 オーストラリア往年の名選手の名を冠した「ダフネ・アクハースト・メモリアル・カップ」に手が届くところまで来た。野球で言えば九回2アウトまで相手、ペトラ・クビトバ選手(チェコ)を追い詰めたのだ。

 ■一喜一憂せず

 ところが、そこで予想外の粘りに見舞われ、このゲームを落とす。いわば世界の壁だった。「勝ちを意識した」と後に語っている。勝負の分かれ目はここだった。それまでの大坂だと、そのまま相手に流れを渡しかねないところだ。自分の思い通りにいかないと怒りがこみ上げイライラを募らせる。「精神年齢は3歳児だった。いまは5歳児かな」と冗談めかして自己分析するくらいである。

 第3セット前にトイレタイムを取った。タオルですっぽり頭を隠しコートを離れる。落ち込みようが痛々しい。そこでどう気持ちを切り替えたのか。「ちゃんと現実と向き合わないとと思った」。そこから本来の冷静さが戻ってきた。テレビ画面でもそのことがはっきり顔に表れていた。感情を表に出さなくなっていた。一喜一憂しなくなった。大声を上げなくなった。

 今後の自分の課題として「成熟」を挙げている。具体的には「思い通りにいかない状況を受け入れる力」だという。自我がめばえ始めた幼児のしつけに苦労する親の姿を連想させる。

 ■痛恨の引き手

 翌27日、大相撲初場所千秋楽でもやはり精神力に絡む勝負のあやを感じさせる土俵があった。結び、大関豪栄道と関脇貴景勝の一番である。ここまで強烈ないなしはあっても決して引かない冷静な貴景勝がなぜか自らまともに引いてしまったのだ。

 関脇玉鷲の初優勝が決まった後とはいえ、相撲内容によっては来場所の大関昇進に可能性を残す一番で痛恨の完敗である。やはり邪念があったと言わざるを得ないだろう。いつもの冷静さではなかった。そう見えた。

 大舞台になればなるほど冷静さを維持することがいかに困難なことか。誰もが味わう人生の節目で試される精神のありようが、勝負の世界でも見えるようだった。

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