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憲法施行70年の分岐点

政治的遺産づくりを許すな

 ■不誠実、拙速な改憲提案

 施行70年の日本国憲法が分岐点に立たされている。

 安倍首相が「2020年を新しい憲法施行の年にしたい」とし、自衛隊の存在を明記する条文を憲法9条に加えることが「国民的議論に値する」との考えを表明した。あまりに唐突で拙速すぎる提案だ。

 思い出してほしい。安倍首相は昨年夏の参院選挙で徹底した「争点隠し」で改憲を封印し、結果として改憲勢力3分の2を得た。国民にみせず知らさず、今、自らの提案で国会に議論の加速化を求める。不誠実である。

 自らの支持層へは改憲を熱く語り、国民の代表である国会審議ではまともに答えようとせず「新聞を熟読されたらいかが」と言い放つ。おごり以外の何ものでもない。

 唐突に出された「高等教育無償化」も、国民の賛同を得るための「すり替え」や「目くらまし」などと、施行年についても「五輪の政治利用」と批判を集めている。

 祖父の岸信介首相が成し得なかった改憲である。首相個人の政治的遺産(レガシー)づくりが目的ならこれを許してはならない。政治は国民のものである。

 ■現行憲法の理念実現が先

 国民主権、平和主義、基本的人権の尊重。憲法の基本理念は、戦後日本の礎を築き、平和国家としての歩みを導いた。

 9条についても長年の議論がある。だが、「9条のもとの自衛隊」であることによって平和主義と専守防衛政策が確立され、一人の戦死者も出さなかった。

 憲法は主権者国民が権力を律するためにある。国民の間から具体的な改正を求める声が湧き上がることが改憲の前提であり、それがあるかと言えばない。つまり民意は改憲を求めていない。機はまったく熟していない。

 そもそも国家のあり方を定める憲法である。議論は極めて慎重に、時間をかけて行うべきであり、期限を付すべきではない。

 安倍政権は、集団的自衛権行使容認、安保関連法制定に加え、「駆け付け警護」発動や朝鮮半島情勢に便乗した「米艦防護」行使で米軍・自衛隊の一体化を既成事実化した。

 求められているのは破壊された立憲主義と民主主義の再生だ。改憲より平和希求、地方自治の優先、生存権といった現行憲法の基本理念を実現することが先だろう。

 安倍首相はこれまで改憲すべき内容を国会の憲法審査会の議論に委ねる姿勢に徹してきた。その進捗(しんちょく)状況は衆院が4回、参院0回。9条に踏み込んだ議論は一度も行われず、遅々として進んでいない。 

 しかも先月20日の衆院審査会は、「国と地方のあり方」がテーマ。参考人4人全員が米軍基地負担が集中する沖縄について、自治権強化の重要性を指摘している。

 ■歯止め失う重大な懸念

 さらに政権与党内では、朝鮮半島情勢に便乗して巡航ミサイル・トマホークの導入を検討していると伝えられる。「敵基地攻撃能力」の保有である。

 専守防衛との整合を図るため「反撃能力」保有と説明するが、いかにも危うい。軍拡競争につながらないか。

 そのうえで、9条改正に踏み込めばもはや歯止めを失うのではないか。重大な懸念である。

 憲法改正は国会で3分の2以上の賛成を得て発議され、国民投票に付される。9条が長い間の議論でもあったことを思えば、賛否いずれにせよ日本社会の分断につながりかねない。

 遠い、どこかの議論ではない。憲法適用45年の沖縄県民、私たち一人一人も背負わなければならない課題である。

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