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リスク負う覚悟はあるか

陸自配備、いま決めてはいけない

■柳澤講演会が示唆するもの

 中山義隆石垣市長が「遠くない」時期に陸上自衛隊部隊の石垣島配備について結論を出すという。

 先日開かれた石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会主催の講演会「石垣島で考える戦争と平和」は、実に示唆に富むものだった。

 講師は防衛官僚を長年勤め、内閣官房副長官補として安全保障などの実務を担当し、現在は自衛隊を活かす会代表の柳澤協二氏。

 氏は「石垣島配備計画は尖閣向け。最前線にパワーがあれば(攻撃の)目標になるリスクがある」と指摘。そのうえで「住民の選択」としつつ、リスクを負う覚悟を聴衆に問いかけた。全ての市民に対する問いかけでもある。

 現時点でこの問いかけに答えられる市民がどれぐらいいるだろうか。配備を決定することは、私たちだけでなく、これから生まれてくる子どもたちという将来の世代にも攻撃目標になるリスクを負わせることを意味する。

 いったい誰が未来に及ぶその責任を負うことができるだろう。誰にもできない。そんな無責任なことをしてはならない。

 機はまったく熟していない。全市民的な議論も成熟していない。何より市民の誰もが覚悟できていない。今、決めてはいけない。

■抑止力のジレンマ

 柳澤氏は、抑止力について「武力を強めることは安全につながらない。これが安全保障のジレンマであり、抑止政策の副作用だ」と指摘。「対立の根っこを和解によってなくすことで安心できる平和が生まれる」とも述べた。

 また、尖閣危機の背景として、民主党政権時の中国漁船船長逮捕時の危機管理の失敗と国有化という「政治の失敗」についても指摘し、「政治の失敗を軍事で解決することは絶対やってはいけない」と述べた。

 一方で、何から守られたいか、安全でいたいのかについて、自然災害なら警備部隊でなく施設化部隊が最適であり、戦争から安全でいたいのなら国際戦争法に基づく「無防備都市宣言」が最も有効であることも示唆した。

 思えば戦後71年、沖縄本島を除く南西諸島は、軍事基地のない無防備状態であり続け、それが周知の事実でもあった。市民がいま最も考えなければならない問いかけでもある。

■全市民的な議論こそ必要 

 石垣市は、先の公開討論会で実施したアンケート結果をまとめて公表した。「配備賛成」は27%、「反対」が46%。「全市民的な議論を深めるべきだ」「地域に与える影響についての議論がほしい」などの意見も27%あったという。

 また先日、日本記者クラブ加盟の取材団が石垣島、与那国島を訪れ、自衛隊の南西諸島配備に関する取材を行った。県紙2紙も加わり、「陸自配備 揺れる石垣」「揺れる国境の島」などとリポートしている。

 全国紙でも東京新聞が8日付で「開戦75年に考える 悲劇の記憶が蘇る」と題する社説を掲載した。戦争マラリアや疎開船漂流など先の戦争による悲惨な記憶に触れ、「住民の意見は割れているのが実情です」と伝えている。

 柳澤氏の講演はまた、「必要以上に緊張を高めてはいけない」とする一方で、市民の選択について「簡単な答えを見つけてはいけない」とも述べている。

 今、市長一人で決めてはいけない。市民自ら考え、議論する時間がまだ必要だ。判断するための情報も不足している。何より、島の未来を決めるのは市民である。

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