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消滅の危機にひんする島んちゅの宝

可能性豊かなスマムニなのに

■スマムニ飛び交う町に再び

 「近所のタカヒロ兄さんは、本土の大学に行っていても、帰省してわが家の前を通る時は石垣越しに『おばさん、ミシャーロールン(お元気ですか)』と声を掛けて行き、母を喜ばせていた」

 登野城ルリ子さんの随筆の一節である。情景がありありとまぶたに浮かぶ。「おばさん」の喜びも手に取るように分かる。本土の大学で学ぶ近所の秀才は自分のことをおろそかにしていない。それも方言でのあいさつだ。似たようなことが、かつては町のそこここで展開していた。

 ところが近年は四箇の町中で方言を耳にするのはむしろ珍しい。石垣の町も個性がなくなり地方都市の一つにすぎなくなったと嘆く人もいるが、どうだろう街角に方言が飛び交えば少しは改善されないだろうか。観光客にとっても旅先での耳慣れない言葉は旅情をそそるものの一つだ。方言は強力な観光資源になり得るはずだ。

■日本語を豊かにするスマムニ

 うちなーぐちの普及に取り組む比嘉光龍さんは「英語が大事だという意見もあるが、うちなーぐちも英語もやればいい。二つも三つも言語が話せることで視野が広がる」と応えた。同感だ。その方が語いや表現が豊かになり、物事の理解も深まる。意識するしないにかかわらず言語どうし照応したり比較したりして深化するはずだ。スマムニを話せる人は日本語と合わせて立派なバイリンガルだ。スマムニには日本祖語につながる語が少なくないから、むしろ日本語を豊かにする。日本語の語源解明の糸口になることもある。

 下地勇さんは都会風なメロディーに宮古フツをのせる音楽を創出した。トゥバラーマ大会予備審査できいやま商店の亮作さんは方言のみ(楽器なし)で野トゥバラーマを歌った。それを「僕のトゥバラーマのスタート」と話したという。八重山民謡をきいやまの音楽に取り入れたいというから今後のさらなるパワーアップが楽しみだ。優れた表現者の新たな挑戦・試みである。

■学校で、地域で、青年会で

  スマムニ推進協議会作成のスマムニポスター(体の部位)はすぐ使えそうだ。ティーは手から生まれたのだろうか、どうして足はパンだろうかと子どもたちは言葉の成り立ちを身近に感じ取るかもしれない。石垣市文化協会の「すまむにで読む昔話」は八重山の風土、文化、精神のようなものが子どもたちを温かく包み込むに違いない。

 学校現場は現時点では方言に特化した授業をうつのは難しいだろうが、少なくとも方言の意義、魅力、可能性については十分に伝えなければならない。そのためにも教師自身が八重山のスマムニの的確なネーミングや優れた表現等に一通り目を通したり、耳にしたりすることだ。手頃な方言辞典は何冊もあるし、優れた話者もまだ健在だ。

 地域のつながりが弱くなったと指摘されて久しい。どうだろう方言を手掛かりに再構築できないだろうか。特に青年会に期待したい。子どもアンガマを通して小中学生に方言を指導する岡山稔さんの取り組みは示唆に富む。

 「島人ぬ宝さがし」だが、方言は最たる宝の一つだろう。その宝の消滅はとてつもない損失であり、八重山に住む私たちの敗北でもあるだろう。

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