Category: 不連続線
9月、夏休み明けともなれば以前は誰が一番よく遊んで日焼けしたか、その色の黒さが話題になったが、紫外線が皮膚がんを引き起こすのではないかと言われてから現在はまったく様変わりである▼泳ぐ時は男性でも念入りに日焼け止めを塗る人は少なくないし、女性ならば日常の車の運転の際にも長袖そして手甲さえつけていて、テレビやラジオは毎日紫外線情報を流している▼学生のころヘミングウェイ「老人と海」を読んでいたら主人公の老漁師を描写して“その頬には熱帯の海の照り返しでできた良性のSkin Cancer(皮膚がん)の茶色いシミがたくさんついている”とありびっくりした▼われわれにとって日に焼け風に吹かれ、深いシワが刻まれた顔は健康と労働、人生を肯定的に象徴する尊い姿であるというイメージが強かったからだ▼1950年代にすでにヘミングウェイは作家の鋭い眼で日焼けは尊いものでもなんでもなく重労働の結果であり皮膚がんの前ぶれであると見抜いていたことになる▼“日光の少ない北欧ではこんなふうに日光浴を楽しむのだ”と日光浴の有り難さを注入されてきた世代にとっては違和感を覚えざるを得ない日々であるが、われわれは自分の一番基礎的な感覚さえたえず変えざるを得ない不安な事態に直面しているらしい。(八重洋一郎)
コメントしてください。(
)