6月
19日
2010

行政の取り組みを望む

Category: 社説



古謡継承、地域の取り組みには限界が…

■古謡は消えゆく運命にあるのか
 本日6月19日と20日及び26日と27日に、当社主催の第36回八重山古典民謡コンクールが開催される。本コンクールは、正確な八重山古典民謡の伝承普及をはかり、八重山の音楽文化の発展向上に寄与することを目的として実施しており、本年は、奨励普及賞、新人賞、優秀賞、最優秀賞に218人が挑戦する。正しい八重山古典民謡の継承のために、受験者の奮闘を期待したい。

 ところで、2007年5月から本紙に連載された當山善堂氏の「校合八重山古典民謡」が5月30日の「んざとーら節」(んざとーらユンタ)で終了した。わかりやすい解説に加え、新たな問題提起を積極的に投じられた著者の3年余のご労苦に敬意を表したい。
 連載を締めくくるにあたって當山氏は、「《古謡》と《節歌》の豊かな世界を支える《八重山語》は日常生活の中から早晩消え失せる運命にある」と嘆息され、古謡と節歌の相関関係、伝承方法について真剣に深刻に考えなければならない、と締めくくっておられる。

 八重山のユンタ、ジラバ、アヨーなど私たちの先達が日常生活の中から生みはぐくんできた古い歌を残すために各地域で古謡保存会が結成され、後世に正しく継承しようと地道な努力がなされているが、古謡を取り巻く環境は厳しいものがある。歌の背景となっていた生活の状況がほとんど失われるとともに、歌い手の高齢化によって貴重な古謡はますます遠くに押しやられ、残念ながら消えゆく運命にある、と言わざるを得ない。

■体系的な調査を
 古謡保存のために各地域個別に取り組みが行われ成果をあげているが、八重山全域における総合的体系的な調査は十分に実施されていない。古謡を保存継承するための体制はどうなのか、残されている歌、失われてしまった歌の実態はどうか、どこに課題があり、課題を克服するためにどうすればよいのか。
 まずなすべきことは、八重山全域における古謡伝承の実態把握であろう。公民館等を中心に、各地域でほそぼそと保存継承に取り組んでいる現状には限界がある。実態を把握し後世に正しく引き継いでいくには、どうしても行政の力が必要である。現在大会も開かれているが、それだけでは弱い。石垣市、竹富町、与那国町が同時期に横断的な取り組みをしなければならない。専門家の協力を得て体系的な調査を行うことから第一歩を踏み出してもらいたい。

■音と映像を残そう
 節歌については、工工四がある程度整備され、レコード、テープ、CDなども数多く発行されている上に優れた研究者によって体系的な研究がなされているが、ユンタ、ジラバなど古謡についてはどうであろうか。
 3市町は、それぞれの地域の古謡の置かれている現実を把握するための聞き取り調査を実施し、活字と音と映像で記録することが、何よりも喫緊の課題である。特に、映像化に当たっては、農作業や家造り、漁労の様子などユンタ、ジラバに歌われている往時の生活を可能な限り再現することが継承していく上で大事なことだ。
 その上で、すべてを公表し、地域の皆さんに先祖の歌に触れる機会を持たせることが重要であろう。図書館の活用はもちろんのこと、インターネット等を通じて国内あるいは海外に向けても積極的に音源や映像を提供すべきではないだろうか。また、次世代への継承をはかる上で忘れてならないのは、私たちの先祖が営々と築き上げてきた古謡の世界を学校教育に取り入れることである。これらの積み重ねによって、後世へ引き継ぐ態勢が可能となる。
 歌い手の高齢化に加え、交通通信体系の急激な変化は、私たちの日常を信じられないほど便利にし、グローバル化している反面、古い時代をあっさりと脱ぎ捨ててきたのではないだろうか。まさに今すぐ着手しないと間に合わないことを私たちは肝に銘じよう。

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