Category: 不連続線
石垣博孝絵画展を見た。氏の55年にわたる芸術的持続の証明である▼後期作品については新垣義昭さんが適評を書かれたので、私は前期の、しかもただ一点だけをここにあげる。「夏祭りの頃」と第された大作。それは会場入り口に展示されていたが私は一目見るなり引きつけられ、翌日もそれを見るためだけに再訪したのであった▼何という見事な構図!空が描かれ海が描かれ地が描かれそれを降りてゆく人々が描かれ、そして地下さえ描かれているような印象を受ける▼題材はアカマターが夜明けとともに十ビンドウへ帰っていくところであろう。しかしこれはまた夏祭りの準備のためにいそいそと人々が地下へ入ってゆく情景とも見える。すなわち海の彼方、幸い溢るる「ニライの海」へと通じる地の底、ニーラスクへこもりゆく人々の次第に安らいでゆく感情が深々と伝わってくるのである▼かなり若い時の作品だというが、しかし私にはこれこそが氏の代表作のように思われる。若いが故に、色の重ね方が甘い、物の輪郭があいまい、絵筆の扱いが早すぎるなどの欠点もまま見られるが、この立ち位置を大切にし問題点を丹念に克服していけば、あの死力を尽くして“赤ショウビン”の絵を画いた田中一村に並ぶ可能性がある▼氏の更なるご活躍を心から期待する。(八重洋一郎)
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