12月
12日
2009

乱売合戦は自殺行為

Category: 社説



不況の今、業界は結束を

■ゴルフ場で宮古に遅れ
 平成19年をピークに低迷が続く八重山の観光産業は対前年6%減となる73万人台の見通しとなり、今や5年前の入域水準に逆戻りしようとしている。
 西表石垣国立公園やフランスの旅行ガイドブック「ミシュラン」で三ツ星を獲得した川平湾など美しい自然と豊かな文化に恵まれた八重山観光は激烈な低価格競争を繰り広げる沖縄本島の観光業界を尻目に比較的安定した経営環境にあったがこのところ様相が一変してきた。

 お隣の宮古島は失礼ながら八重山ほどの観光資源に恵まれなかったが、努力を重ね、早くからトライアスロン大会やプロ野球キャンプ、ゴルフ場設置など多くの交流施設を展開しスポーツアイランドとして評価されるようになった。
 本格的なゴルフ場を持たない石垣市はゴルフ客など富裕層誘客が立ち遅れ、会議や宴会付きのコンベンション観光は宮古島で開催されるケースが増加し、この分野で完全に立ち遅れている。

 新石垣空港の開港を目前に控え、八重山に新規参入した外資や本土企業の観光施設が急増したことでサービスは向上したが、観光客が6%の減少であるにもかかわらず、少ないパイを奪い合い、郡内主要ホテルの稼働率は平均12%低下し先行きが読めない厳しい状況になっている。

■航空・旅行社任せのツケか?
 リーディング産業として期待されてきた観光産業だが、観光資源に恵まれていたため八重山らしい本来の魅力の掘り下げが進まず、誘客宣伝は航空会社や旅行会社任せで量的拡大が進み、地元はさほどの努力なくして順調に推移してきたツケが今、未曾有の不況と共に襲い掛かっている。
 ホテルなどの装置産業は投資額が大きく資金の回収に長期間を要するため経営が窮地に陥ると安売り合戦に走りやすく、企業を維持するため人件費など非情なリストラ策はすさまじいものがある。特に近年参入してきた外資や本土企業は月次単位の決算を重視し現場に厳しいノルマを課している。

 売上高はもとより仕入れや経費についても小さな島の生活文化や取引慣習が異なる中で強行して信頼関係を失うことがあると聞く。人口5万人の島々に73万人の観光客がどっと押し寄せる今、地元の視点から観光産業の存在意義と八重山の魅力の原点は何かを再検証する必要があるだろう。

■観光業界に悪影響
 販売数量が増加すれば単価が下がるのが経済の常識で、量を求めようとすると安価になりデフレの今、ちまたにはバーゲン商品が氾濫(はんらん)している。金本位制時代の経済理論に「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの法則があるが、最近東京発2泊3日の八重山ツアーを大手旅行社が大手ホテルと提携し3万9800円で販売したことに危機感を覚える。
 これはデパートで販売していたブランド商品を露天のたたき売りで投げ売りするような状況だ。受け入れ施設の価格は不明だがツアーの品質に不安が残り、持続的に発展を目指す観光地として業界に悪影響が発生する可能性が高く、地域経済が疲弊するのは容易に想像できる。

 目先の売り上げをなんとか確保しようとする近視眼的な経営でなく、苦境の今こそ長期的な観点から行政や観光団体が先頭に立って業界一体の展望を示すことが求められている。本土復帰から37年、これまで築き上げてきた地元観光業界の一部から「観光客が増えて自然への負荷が高まった」、「観光は誰のためのものなのか」という疑問の声を聞くことが多い。
 新規参入の外資や本土企業を排除するものではないが努力を重ねてきた地元企業をしっかり守り育て、住民が「観光産業にかかわって良かった」といえる観光地を目指したいものである。

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