納得できない沖縄県立図書館八重山分館の閉鎖
■安易に閉鎖していいのか
沖縄県教育委員会は、「沖縄県行財政改革プラン」に基づき、2010年3月をもって県立図書館八重山分館を閉鎖する方針を決定した、という。沖縄県の財政が極めて厳しく、「県の果たすべき役割を改めて見直し、事業の選択と資源の集中によって、重要課題に対応できる行政体制を構築していかなければならない」という行革プランの趣旨は理解できるものの、厳しいから、苦しいから文化の中核である図書館を閉鎖する、という姿勢は安易すぎないか。
そもそも八重山分館は、1914(大正3)年に「八重山通俗図書館」としてスタートし、1937(昭和12)年に「八重山図書館」、戦後は「琉球政府立八重山図書館」等を経て、復帰後改称され現在に至っている。復帰前は建物も木造の粗末なものであったが、当時の小中高生や若者たちにとっては、知識を吸収する場として親しまれていた。
60歳代以上の人なら、木造建ての八重山図書館で木の床をきしませながら、カビのにおいのする書架の間を心ときめかせて本のページをめくったことを思い出すだろう。この書物の山の中から、多くの有能な人材が育っていったことを忘れてはならない。
沖縄県立初代図書館長であった伊波普猷は、「諸君は高尚なる読書の趣味を解せずして一生を送ろうとせられるか。…図書館は知識の灯台です。趣味の源泉です」と言っているではないか(「沖縄県立図書館通信」第二七号より引用)。
■県教委の姿勢を問う
2009年3月に策定した「沖縄県教育振興基本計画」には、「県民の生き生きとした社会教育活動を支援し、時代のニーズに即した学習活動に対応するため、公民館や図書館等社会教育基盤の整備を推進する」と高らかにうたっており、生涯学習振興課の主要施策にも、「県立図書館の整備充実を図る」と明確に記載されている。これらの言葉は、単に絵に描いたもちなのか。
県教育委員会の姿勢には、沖縄の教育文化の中枢を担って生涯学習を振興し県民に夢と希望と誇りを与える、という強い気概と情熱が感じられない。厳しい状況の中で、いかにすれば施設を充実し図書館活動を活性化することができるか、運営改善のために真剣に取り組んできたのだろうか。
特に、県立図書館の分館は宮古と八重山にしかなく、他の地区にはないのだから廃止もやむを得ない、という論理には首をかしげざるを得ない。宮古、八重山に県立図書館があることは、これまでの県行政が離島地域を重視し、優れた人材育成に取り組んできた成果として、むしろ高く評価すべきである。自らの施策を否定するような今回の対応は、はなはだ疑問である。
県の行財政を取り巻く厳しい状況については、承知しているが、厳しい状況だからこそ智恵を出し、工夫し、地域の理解と協力を得ながら活性化を図るべきである。苦しいから閉鎖するという発想は、文化行政の放棄である、といわれても仕方あるまい。
■読書環境の充実を
来年2010年は、国民読書年である。「文字・活字によって、人類はその英知を後世に伝えてきた。この豊穣(ほうじょう)で深遠な知的遺産を受け継ぎ、更に発展させ、心豊かな社会の実現につなげていくことは、我々の大きな責務である」(参議院の決議文)という趣旨に賛同して、全国的にさまざまな取り組みが予定されている。
また、来年、沖縄県立図書館は創立100周年の記念すべき年を迎える。1世紀を歩んできた今こそ、活字離れ、読書離れの流れに歯止めをかけ、県民の読書に親しむ機運を盛り上げ、読書環境の充実を図るべきであろう。地域を担う有為な人材を育成すべき重要な節目に、県立図書館八重山分館を閉鎖することは納得しがたい。